魔女と鉄錆

 恋人を亡くしたばかりの魔女が雨の日に拾ったのは、鉄でできた自動人形だった。

 けれど人形は表面も中も鉄錆だらけでぴくりとも動かない。

 魔女は毎日、その人形を丁寧に磨いた。


 魔法を使えば早いだろうに。

 しっ、恋人を亡くしておかしくなったのさ。

 可哀想に。


 人々の声を聞き流し、魔女は人形を磨き続けた。

 鉄錆は減っていき、人形は少しずつ動き出す。いびつな動き、片言の言葉は、やがて滑らかなものに変わっていく。

 見違えるよう輝く自動人形は、魔女の死んだ恋人と瓜二つだった。

「会いたかった」

 すっかり錆がなくなった人形に、魔女はうっとりと言う。

「これでずっと君のそばにいられる」

 生きていたときと同じ声、同じ顔で人形が微笑んだ。


※お題:「可哀想」「鉄錆び」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます