レンアイポリゴン

 時はMW銀河統合歴8415年。

 MW銀河連合への加盟が最も遅かった地球には、MW銀河各域から、地球に様々な支援を行うための応援が入っていた。中には、アンドロメダ銀河帝国から派遣されている職員もいる。MW銀河において、これほど多種多様な星人が集結しているのは地球だけだった。

 そのため、地球はMW銀河連邦内の後進国でありながら、人種のるつぼであり、新たなパッションが生まれる可能性が最も高い場所として注目を集め、ますますMW銀河連合内外から人や物資が集まるのであった。

 それだけに、当然ながら問題も多い。地球は、MW銀河連合内の他の惑星と違い、今でも一つの惑星内に複数の国家が乱立している戦国時代だ。地球人内で元から、あるいは遙か昔から抱えている決着の付かない様々な問題も多いというのに、そこに異星人がやってきたものだから、後進国の地球はもう収拾が付かない。せっかくMW銀河連合に加盟したというのに、衛星の月ごと心中しかけたこともある。

 MW銀河連合としては、地球には、先進惑星並みに統一国家を形成してもらいたいと考えているので、異星人が絡んだ諸問題を引き受ける専門のチームを立ち上げた。

 それが、MWポリゴンである。誰が命名したのか、どこかに正確な記録は残っているはずだが、もはや誰も気にしていない。地球上(時には月や火星、金星上のこともある)で発生した、異星人が絡む厄介ごとはMWポリゴンにすべて持ち込まれるため、職員たちは自分たちが所属する組織の名付け親のことなど気にする暇もなかった。

 持ち込まれる厄介ごとは、異星人に枯れかけている油田を乗っ取られたとか、太平洋の真ん中にムー大陸を再現しやがったとかいう規模の大きいものから、ナゴヤキャッスルの天守閣から盗んだシャチホコをバイクに改造して爆走しているとか、異星人がイモ畑にレトロなミステリーサークルを作ったせいでポテチが食べられなくなったとか、隣のボブが訳の分からないことを言い始めたのは異星人にさらわれたせいだとかいう些末なものまで、実に様々だ。

 MWポリゴンがわざわざ出張るほどのことでもないような事案も多いが、持ち込まれた以上は誠心誠意対応しましょう、というのがMW銀河連合のモットーである。連合から派遣されている職員の多くも、真面目にそのモットーに従っている。

 地球人の職員もそうだ。モットーに従わなければ、脳に怪しいチップを埋め込まれてしまう。それに、忙しくてもこれは地球のため、愛は地球を救うと思えば、自然とひきつった笑みを浮かべられるものである。

 そんな、忙しくても和気藹々としてアットホームな雰囲気あふれる職場らしく、職場内恋愛が発生していた。

 MW銀河連合に加盟する前は、地球人の価値からすると非モテ系だったスズキさん(仮名)だが、ここでは複数の異星人の熱い視線を集めてやまない。ベガからやって来た織り姫(あだ名)は、その中でも特にスズキさん(仮名)にぞっこんだった。一年に一度しか会えない彼氏より断然魅力的らしい。

 しかし、スズキさん(仮名)は月出身のかぐや姫(通称)に叶わぬ恋をしていた。MWポリゴンで働いておきながら価値観の古いスズキさん(仮名)は、地球人同士で恋愛すべきと思っていたのである。この場合は、まったくの片思いであるが。

 さて、スズキさん(仮名)から好意を持たれていることを若干迷惑に感じているかぐや姫(通称)は、ヘラクレス座β星から派遣されたヘラクレス(二つ名)に恋い焦がれていた。地球上での姿は仮のものらしいのだが、その姿はいにしえの神話に出てくる同じ名前の英雄そのもの。ヘラクレス(二つ名)のたくましい腕で壁ドンされたらどんなに萌えることだろう、というかぐや姫(通称)の妄想が尽きることはない。

 ところがそのヘラクレス(二つ名)は、織り姫(あだ名)に思いを寄せていた。故郷のヘラクレス座β星に妻も夫も子供もいるヘラクレスは、織り姫(あだ名)に思いを打ち明けるべきか否か、厄介ごとの相談を受けている最中でも考えずにはいられないほど、織り姫(あだ名)に夢中だった。地球からヘラクレス座β星までは、ワームホールポーションを使っても二週間かかる。単身赴任のヘラクレス(二つ名)の帰郷は、地球時間で年に二回した認められていないし、ワームホールポーションの利用料は高額なので、交通費補助が出なければ、ヒラ職員ではそうそう使える移動手段ではない。そう考えると、地球でちょっと浮気したところでばれる心配もないだろうと思うのだが、肝心の織り姫(あだ名)がスズキさん(仮名)にぞっこんなので、幸か不幸か、今のところヘラクレス(二つ名)の家庭の平和は守られている。


 ――これは、MWポリゴン内で発生している職場恋愛のほんの一端です。もっと詳しい恋愛事情を知りたい、自分もいろいろな異星人とめくるめく恋をしてみたいというそこのあなた、いますぐにMWポリゴン人事課に履歴書を送ってください。我々は、未知との遭遇に臆することのない人材を常に必要としています。



※第38回てきすとぽい杯参加作。お題「多角関係、3人以上の人物が絡む恋愛模様を、作品に登場させる」

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