サチスイ

作者 黄間友香

演奏×音楽劇の青春群像劇!

  • ★★★ Excellent!!!

 幸高校吹奏楽部の略が、題名の『サチスイ』である。その名の通り、高校の吹奏楽部が、定期演奏会に挑む姿が描かれている。目を見張るのは、吹奏楽や音楽が苦手でも、その知識がなくても、読ませてしまう技量。そして、些細な日常を描いているにもかかわらず、感情移入してしまうところだ。この物語は、吹奏楽と音楽劇という二部構成になっていて、そこが新しいと感じる。しかし、ミステリーにある大きな事件や事故、ファンタジーにある熱さは描かれていない。それなのに、音符一つ読めない小生が、スラスラと読んでしまった。
 確かに、物語の最後には「サチスイメモ」として、楽器の特徴や吹奏楽ならではの用語の解説があるので、とても分かりやすい。だが、もしもこのメモがなくても、読んでいたと感じさせる。
 演奏と音楽劇のため、それぞれに乗り越えなければならないこと、二つ一緒に乗り越えなければならないことが、沢山ある。移動しながら音を合わせる難しさ。部員の突然の不登校。大道具に必要な経費の膨大さに頭を抱えたり、上手く悪者の声が出せなかったり。そして、徐々に近づいてくる定期演奏会。大げさではないささいな出来事が、サチスイメンバーそれぞれの視点で描かれていく。まさに、青春群像劇。
 まるで、このメンバーの中に、読者が入り込んでいくような感覚がありました。

 是非、ご一読ください。

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