サチスイ

作者 黄間友香

たくさんの音が聴こえる。楽器の音、涙の零れる音、そして笑顔の咲く音が。

  • ★★★ Excellent!!!

大勢で力を合わせて、一つのものを作り上げる。
それはとても素晴らしいことで、そうして出来上がったものは掛け替えのない宝物になる。
だけど、簡単じゃない。
一人ひとりが持つ能力や経験は違うし、何より考え方も様々だから。

この物語は、幸高吹奏楽部、通称「サチスイ」を舞台にした青春群像劇です。
サチスイのメンバーは、次の定期演奏会で今までやったことのないマーチングや劇を取り入れた演目を行うため、準備を始めます。

主人公を交替しながら一人称で綴られる文章からは、それぞれの感情や思考がダイレクトに伝わってきます。
彼女らの視点を通して楽器の音や教室の空気の匂いまでもを感じ、サチスイの一員としての日々を追体験しているような気持ちになりました。

思い通りにいかないもどかしさ、自信を持てない不安定さ、友達とすれ違ってしまう苦しさ。
想いが通じる喜び、みんなの気持ちが一つになっていく充足感、自分を受け止めてくれる、誰かを受け止められる、仲間がいるということ。
楽しいことばかりではないけれど、悩みもがきながらも前に進んでいく青春の日々が、まさしくここにあります。

大勢で力を合わせて、一つのものを作り上げる。
決して簡単ではないけれど、それを成し遂げた暁には、きっとたくさんの笑顔がきらきらと輝くことでしょう。
ラストに期待を寄せつつ、彼女たちの奮闘を追っていきたいと思います。

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