鳩は眠る。

作者 白河宣子

50

17人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

満州国、日本軍……と聞けば、それだけでぴりりと緊張を感じます。
そこに参謀参与の男性と、優秀な密使だった美青年の、密かな想いが絡んだら……
いろんな意味でハラハラドキドキが止まりません。

雪の白さと冷たさ、熱い吐息と情交、血と硝煙と死のにおい。
そして時代の冷徹さと二人の想いの純粋さ。

作者さまはそのすべてを、鮮烈に描き出しています。
読後は一本の映画を見終わったようでした。これで一万字未満。すごい。
ぜひ、二人の想いを込めた選択を見届けてください。
美しく強い、お薦めの物語です。

★★★ Excellent!!!

満州の事をBLで扱っているモノって、見かけないですよね。
今作は、戦時中に占領下の満州にて、愛を貫いた男の話。

詰問され、国からどれだけ叱咤されようとも、一途な愛を貫き通す。
今作ではBLという形ですが、こういう一貫した精神が、皆さんのイメージする「侍」や「信念」に通ずる気がします。

ともかく、息が詰まる状況のせいで、穏やかな日常さえも不穏な空気が微かに漂うのです。

けど、それがいい。

だからこそ、霧鳩の仕草一つが映える。

斬新な切り口で描かれるBLを読みたい方は、必読です。
ぜひ、ご覧ください。

★★★ Excellent!!!

満州と言う架空の舞台で男二人は出会い、愛を深めていく壮大な物語です。たった一万文字と言う文章でこれだけクオリティを引き出すのはさすがとしか言えません。

綴られる物語は、切なくまるで実写映画を見ている印象を受けました。短編の作品ですが、是非読んで頂きたい力作です。

★★★ Excellent!!!

1939年の雪降りしきる満州。苅戸崙という架空の街。

この設定を読んだだけで、私は既にこの不思議な世界の虜になりました。

関東軍参謀参与である主人公の前に現れた男の妖しいまでの美しさの描写に息を飲み、次の瞬間にぎょっとします。

辻政信。

この名前。ご存知の人はご存知の毀誉褒貶の激しい実在の軍人です。
架空の街でありながら、辻政信という「リアル」。
それが、不協和音とならず、読者は「リアル」を蜃気楼として薄らと見ながら、架空の街での甘美な愛の世界に酔えるのです。

何と緻密な作り。

しかし、そのようなことを考えずとも、よいのです。
辻政信など知らなくても問題ないのです。

架空の街は幻想的なまでに美しく、男たちの愛は悲しく、儚く、しかし強く。

それに酔うだけで、十分に満たされるのです。


★★★ Excellent!!!

満州が舞台という、これだけで既に急所に刺さっている設定ですが、クオリティ素晴らしいです。
軍隊という閉鎖的男社会、生き死にを託し合う組織の中での男同士の関係が、とても綺麗にまとまっているように思います。

一万字未満で、描写も説明も決してくどくはありませんが、イメージをとても膨らませて貰えます。読後も頭に”残る”短編だと思います。
文章に風情を残すのは、意味深な台詞や描写をぽんと置いとけばいいってもんじゃないのです。丁寧な物語を読んで、それを改めて感じました。

★★★ Excellent!!!

関東軍の作戦参謀として、多くの将兵を死に追いやりながら、自らは責任を取ることもなく、帝国陸軍の中で出世していった男・辻政信。その汚名を着せられ、身代わりに処刑されようとしている男がいた。

満州国で辻の密使として働き〝霧鳩〟と呼ばれていた、糸谷稔(架空の人物)だ。彼は運命を受け容れようとしている。「俺は、命で償うだけの事はしてきた。辻と同罪なんだ」。しかし、参謀参与の喜多山春行(架空の人物)は、彼を助け出そうとする。春行は稔を愛していた。そして、2人は逃避行を試みる——。

満州国を舞台にした恋愛小説。その傑作と言っていい作品だと思います。

春行と稔がどのように出会い、どのように愛を深めていったのか。春行がその職能を使い、稔をどのように助けようとしているのか。物語は主に春行の回想という形で進んでいきます。

男性同士の恋愛を描くBLです(私は読了してタグを見直すまで、そのことに気づかず、稔を男装の麗人くらいに考えていました)が、男女の恋愛に置き換えてイメージしても、十分読み応えのある作品です。

9000字ちょっとの短編ですが、読み終わったとき、壮大な物語を読んだようなカタルシスがありました。

この作品を読み終えたら、ぜひ作者さんの他の作品も読んでみてください。文章力が高く、大きな世界を垣間見せることで、愛する2人の純情、意地らしさを際立たせるのが、とても上手い人だと思います。

★★★ Excellent!!!

存在しない場所を設定にした昭和の匂い香るミリタリーラブ。
全体的に昏く、寒く、
その中で想う気持ちが暖かく、
色香が漂う様に描かれた作品です。

命のやり取り、組織と言う男の生き様、
硬い設定の中で紡がれる愛のお話。

独特の世界観故に、
敷居の高さを感じる方もいらっしゃるかも知れませんが、
短い中にきちんと描かれる二人の恋を、
最後まで読んで頂きたいと思う作品です。

温度の表現に関して卓越した書き手さんであり、
読む時には暖かな部屋で、
暖かい飲み物をご用意する事をお勧めいたします。

ゆっくり堪能して欲しい逸品です。