第373話 第三次世界大戦 ~動乱の始まり~

 日本は、経済が安定している、数少ない国の一つである。アメリカ合衆国とロシア連邦は、謂れの無い汚名を着せ、日本を我が物にしようと画策しているのは、明白な事実である。

 先の大戦において両国は、彼の地を植民地同然に扱った。それは東西に分裂させられた我が国も同様である。両国の侵略を許せば、かつての冷戦を遥かに超えて、世界が両国によって支配される先駆けとなろう。我がドイツ連邦共和国は、両国の日本侵略を決して許さない。

 日本と我が国は、長きに渡り友好を保ち続けている。今こそ我がドイツ連邦共和国は、盟友である日本の為に立ち上がる。

 

 ☆ ☆ ☆


 日本におけるテロリストの問題は、荒唐無稽であると言わざるを得ない。何故、アメリカ合衆国とロシア連邦の両国が、この様な暴挙に出たのか理解に苦しむ。

 アメリカ合衆国は世界の警察ではなく、最早ただの侵略者に過ぎない。日本と領土問題を抱える、ロシア連邦も同様である。国際法に則り我々フランス共和国は、両国の行為が違法であると宣言する。

 このまま、両国が違法行為を続けるなら、我がフランス共和国は両国を相手に宣戦布告を行う。


 ☆ ☆ ☆


 EUの崩壊に先駆け脱退した、我が国の選択は正しかった。今やヨーロッパ諸国の経済は、完全に破綻したと言えよう。それに加えて戦争が始まれば、経済危機に更なる拍車をかけるだろう。

 アメリカ合衆国とロシア連邦は、日本をテロリストとした。しかし、それは日本による策謀である。日本は、戦争特需を狙い東アジアの征服を企んでいる。これは、国際法違反である。また、日本に協力した両国も同様に、国際法を犯している。

 我がグレートブリテン及び北アイルランド連合王国は、この侵略戦争を止める為に三国に対し、宣戦布告を行う。


 ☆ ☆ ☆


 アメリカ合衆国とロシア連邦の行為は、世界平和を脅かす著しい問題である。日本がテロリスト国である事は、事実であろう。しかし、それは侵略行為の理由にならない。

 我がイタリア共和国は、両国の不当行為を認めない。これは、世界を巻き込む大戦争へと発展するだろう。この戦争により、現在の文明は完全に消滅するだろう。

 人類は今、大きな窮地に立たされている。両国の侵略戦争を止める事が出来るのは、我がイタリア共和国しか無い。我が国は、世界平和の為に旗手となろう。


 ☆ ☆ ☆


 日本の陰謀は明確な事実であり、世界中が踊らされている事実に気がつくべきである。日本国内で起きている騒動は、テロリスト行為に見せかけた偽装であり、全ては自衛隊を動かす為の欺瞞である。

 日本は、かつての野望を捨てきれていない。各国が反応を示す事で、日本が侵略戦争を始める口実となるだろう。東アジアを始めに、東南アジアの占領と、かつての悲劇は再び起きるだろう。

 日本はかつての敗戦で学び、アメリカ合衆国とロシア連邦への協力を持ちかけた。このまま放置すれば、アジア大陸はこの三国によって、支配される事になる。

 我がカナダはイギリスに習い、三国に対し宣戦布告を行う。


 ☆ ☆ ☆


 我が中華人民共和国は、幾度となく日本に辛酸を舐めさせられてきた。先の大戦における痛みは、未だに消えていない。彼らは、我が国の固有の領土を占有し、違法な支配を行っている。

 日本は豊かな経済基盤を元に、経済での世界支配を企んだ。そして、我が国民達は奴隷の様に働かされ、現在もそれは続いている。このまま、経済支配を阻止せねば、東アジア全域が日本の支配下となるであろう。日本こそが世界の巨悪であり、今こそ我らは一丸となって倒すべきである。

 我が中華人民共和国は盟友ロシア連邦と共に、日本に対し宣戦布告を行う。


 ☆ ☆ ☆


 我らは先の大戦から長きに渡り、日本の違法行為を指摘して来た。しかし日本はそれに耳を傾ける事はなかった。しかも有ろう事か日本は、我らの悲願である南北統一を、策謀を巡らせ阻止し続けていた。

 我らの経済発展を阻害して来たのは、紛うことなく日本である。彼の国が存在する限り、東アジアに平和は訪れない。そして、その牙は必ず世界へと向かうだろう。日本がこれまでの在り方を改めない限り、世界は破滅へと進む。

 我らは盟友であるロシア連邦、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国と対話する用意がある。東アジアの平和を維持する為に、我々は一致団結し日本を滅ぼさなければならない。


 ☆ ☆ ☆


 アメリカ合衆国、ロシア連邦の両国は、日本の支配を企んでいる。日本におけるアメリカ合衆国の支配は、歴史を見れば明らかであろう。そしてロシア連邦がそれに加わろうとしている。

 アメリカ合衆国が日本を完全に支配した暁には、東アジアに侵攻する事は揺るぐ事のない事実である。盟友である中華人民共和国とロシア連邦には、その事態に気がつかねばならない。

 我らの悲願である朝鮮半島の統一の、障害となっているのはアメリカ合衆国である。日本を足場としたアメリカ合衆国の東アジア侵攻は、必ず阻止せねばならない。そして、それに協力する日本も同様である。

 我が朝鮮民主主義人民共和国は、アメリカ合衆国と日本に対し宣戦布告を行う。


 ☆ ☆ ☆


 中東の平和を脅かして来たのは、アメリカとロシアである。中東の騒乱は、両国の争いが生んだ悲劇と言えよう。そして、これから始まろうとしているのは、日本を拠点とした両国の東アジア支配である。

 今後長きに渡り、東アジアは戦乱が続くだろう。その戦乱は、やがて東南アジアから我が国も巻き込んでいくだろう。我らはかつて、欧米列強の植民地であった。その悲しい歴史は、再び繰り返され様としている。

 日本はかつての大戦で、東南アジアの解放を行った。我が国や東南アジア諸国が存在するのは、日本の多大なる貢献によるものである。

 しかし、これから始まる両国の世界支配の裏には、日本の存在がある。何故、日本がこの様な暴挙に出るのか、非常に不可解である。

 我がインド共和国は、アメリカ合衆国とロシア連邦の軍事行動を決して認めない。そして策謀を巡らす日本の行為も、国際法違反であると宣言する。

 三国が不法行為を止めないのなら、我がインド共和国は三国に対し宣戦布告を行う。

 

 ☆ ☆ ☆


 テロリスト達は、米軍基地に侵入しました。そこで銃火器を強奪し、港区内で抗争を繰り広げました。先の新宿で起きた抗争に続き、国内で銃撃戦が起きたのは、誠に遺憾であります。

 テロリスト達の意図は不明です。しかしこのまま放置すれば、犠牲者が増える事でしょう。

 政府はこの事態に対し、緊急対策本部を設置しました。そして警察と自衛隊が協力し、国内の治安維持を行うものとします。

 また本事案に関し、日米安保に基づく米軍の援護が決定しました。尚、ロシア政府もテロリスト撲滅に協力体制を約束してくれました。

 国民の皆様が、一早く安全な暮らしを行えるように、一致団結して事に当たる所存でございます。

 現在、色々な憶測が飛んでおります。そして様々な国が、強硬な姿勢を露わにしました。自衛隊は、あくまでも国内の治安の為に出動します。

 そして、テロリスト排除に際して行われる、米軍とロシア軍の派遣に関しても、他国を侵略する意図はありません。

 戦争を放棄した唯一の国として、我々は主張を続けなければなりません。我々が旗頭となり、平和な世界を求める為の活動を行う事をここに宣言いたします。


 ☆ ☆ ☆


 深山が大規模な洗脳を行った翌日の事である、各国の首脳は声明を発表した。

 これらの声明は、一瞬にして世界中に伝わった。マスコミは、一斉に各国の判断を避難した。各国の市民は、戦争に反対するデモ活動を行った。

 デモ活動は次第に過激となり、激しく警察と衝突する。その一部始終をマスコミが報道し、デモ活動を煽り立てた。

 

 日本政府は、各国の声明を受けて戦争の意志が無い事を主張する。しかし、それは受け入れられる事は無かった。

 日本に友好的である国は余りにも少なく、米軍とロシア軍の派遣が違法と主張する国が多い故だろう。それに合わせて、日本の陰謀論が持ち上がる。

 最早、日本政府が何を語ろうと、各国は聞く耳を持たないのだろう。国内でデモ活動が活発になる中、軍を派遣する国が現れる。


 三度目の世界を巻き込む大戦争が、始まろうとしていた。

 どれだけ市民が声を上げようと、止まらない。そして、怒りが世界中に広がっていく。それが芽生え始めた災厄の種子を育てる事になると、誰も知らない。


 全てを知っていれば、こんな事は起こらなかったのか。恐らく、それでも結果は変わらなかった。ある者達からすれば、何年も先の計画を早める事が出来ただけなのだから。 

 

 ☆ ☆ ☆


 かつて邪神ロメリアが降り立ち、嫉妬の神メイロードが破壊した高尾山。山は跡形も無く、周辺は未だに破壊された傷跡が、そのまま残っていた。

 復興計画は立てられた、復旧工事も始まった。しかし、瓦礫を片付ける作業中に、事故が多発した。有り得ない程の事故の多さに、慰霊祭が行われた。

 しかし、事故が収まる事はなかった。その為、復興計画は中止となり、未だに放置されている。


 そんな曰く付きとなった高尾山。跡地付近の高台に、一台の車が停まっている。

 助手席には、外国人らしき男がシートを倒し、仰向けになり目を閉じている。そして運転席に座る男は、一通りニュースを見終わると、車を降りた。

 

 男は徐に煙をくゆらすと、天を仰ぎ見た。

 男を良く知る者が見れば、驚くだろう。男は見た事もない程に、悦に入った表情を浮かべていたのだから。


「ははっ、ははははっ、はぁ~はっはっははははは。こんなに上手く行くとはな。深山君、残念だったな。私の、いや我々の勝ちだ」

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