チンポに突き刺さるディストピア感

作者 ささやか

これぞ、シュール「リアリズム」

  • ★★★ Excellent!!!

共感を呼ぶ作品である。鬱屈した現代社会の暗部――ではなく、あえて陽のあたる、恐らく誰もが目にするであろう日常に蔓延っている汚濁を直視した、生々しくもどこかユーモラスな、そんな小説だ。

いまの世の中、ひとたび外を出歩けばどこもかしこもストレスの嵐が吹き荒れている。いつもの通学路、通勤電車内、職場、学校は言うに及ばず、サービスを受ける各種店舗ですらそうだ。インターネットのSNSをのぞけば、それこそ他人の怒りや不満に、自身の感情をかき乱され、そして振り回されることも、決して少なくない。作品を一読すればそれは明白だろう。

よく「社会の闇」だの「心の闇」といった軽い言葉がマスメディアには登場するが、実はそういった社会の病巣というのは、実は闇ではなく、光の中にこそ潜んでいるのではないか。我々はそれに気づいていないだけなのではないか。そんなことを匂わせる、ほんの小さな、けれども決して軽くはないドラマがここには込められている。それらは、嫌な現実を切り取りながらもどこか滑稽で、どこか物悲しく…読者である我々の心に鈍く突き刺さる。のどに魚の骨が刺さるような、そんなもどかしい痛みは、はたして主人公のとりとめのない「妄想」によって浄化されてゆくというのが本作品の肝である。

最初、この作品を一読した時に、映画「フォーリング・ダウン」めいたものを連想したのであるが、幸か不幸か連載途上にある現段階で、語り手である「わたし」はすんでのところで踏みとどまっているのが興味深い。そして、その一線の危うさと確かさに、大きな安心感とカタルシスを覚えるのである。

作風は極めてシュール、だが、そこに描かれているのは紛れもないリアリズムである。この物語の終着地点がどこにあるのか、それはまだ見えないが、今しばらく見守ってゆきたい。

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