第11話『ARゲーム外で動くまとめサイト』


 ステージ1をクリアしたアルストロメリアは数分ほど散策をするが、目立ったようなポイントを発見できないでいる。

ステージは全部で3ステージあり、それを全てクリアすればコンプリートと言う事らしいのはヘルプで確認した。

 しかし、次のステージへ進もうにも矢印の誘導に従うだけでは――スコアが上昇する事はないだろう。

別の意味でもゲームフィールド内で迷子になって、そのまま時間切れもあり得るかもしれない。実際に迷子で時間切れとなり、強制終了したプレイヤーもいる話も聞いた。

ネット上のレビューで炎上するのも、こうした不親切さに対して揚げ足取り、芸能事務所のアイドルコンテンツを神化させようと言う流れ、もしくは別コンテンツを広める為の壮大なかませ犬――まとめサイトでは、そうした取り上げ方をされている。

 真実を探そうにも――今のタイミングでは、色々な部分で都合が悪い。時間切れになりたければ、探すのもありだが――そこまでして収穫があるとも思えない。

本当の意味で真実が発見できるとは、トレンドワード的な意味でも効率が――。さすがのアルストロメリアも頭が痛い話題だ。

【お金をもらって炎上レビューを書くような連中もいる以上、何を信じていいのか分からなくなるだろうな】

【そして、そのお金を出しているのが芸能事務所AとJと言う事か?】

【ソレは分からない。もしかすると、その2台芸能事務所に恨みを持った芸能事務所かもしれないだろう】

【様々な情報が錯綜し――真相が分からなくなっている】

【単純にまとめサイト依存が招いた大事件と言えるだろうな】

 ネット上でも、今回の件を含めて様々な情報が錯綜している。何が真実で何がフェイクニュースなのか見極めずに情報を拡散した結果だ。

こうした混乱に乗じて、芸能事務所AとJがタダ乗り宣伝を行い神化を目指している――と言うのが、WEB小説で題材にされている小説のよくあるパターンだろう。

それ以外でも特定のコンテンツを盛り上げようと、様々な急増コラ画像や偽のまとめサイト、更にはスパムメールと言った物も駆使して――。



 アルストロメリアは矢印の指示に従う形で道を歩いていくのだが、その時は遂にやってきた。

《間もなくチャージされた時間が切れます。クレジットを入れてください》

 これに関しては、どうやって補充をすればいいのか教えてもらうべきだった。ゲーム中にコインを入れられるような場所があるとも考えられない。

道中に端末らしきものが存在していたのは確認しているが、そこにコイン挿入口は見当たらないような形状だった。

それこそ――ある意味でシュールな光景なのは確実。そこで、アルストロメリアはヘルプをチェックし始め――。

「電子マネーが使えそうだけど――」

 支払い手段に電子マネーが使えるヘルプの記述を発見する。

しかし、電子マネーはメーカーによって規格が違うので大丈夫なのか――と言う部分があった。

ソシャゲでは使える種類を限定しているような気配だが、アーケードゲームでは電子マネーが浸透していないような気配もする。

 それでも手元に財布がある訳でもないし、取りに戻るにしてもコンテナエリアはどこなのか――と言うのもあるだろう。

最終的には電子マネーで支払おうと考えるのだが、どうやって――と思う。

《ただいま5000円分の電子マネーが残っています。200円を支払い、延長しますか?》

 この表示がARバイザーに表示される事自体もメタと言うか――ある種の依存症対策なのかもしれない。

フォントは堅めの物だが、特に著作権でどうこう言われるフォントではないだろう。これが日本語で表示されている光景もシュールだが。

異世界トリップは小説での話だが――そう言った物に対して本気で考えている結果として、こうした現実に引き戻す演出等が用意されているのだろう。

さすがにスーツが消滅したら、全裸になるような事はないが――他にも現実に引き戻すような演出は存在するらしい。

「さて、チャージするにも暗証番号を――」

 アルストロメリアが電子マネーで時間をチャージしていた頃、次々とボスキャラを撃破するプレイヤーの情報が入ってくる。

ビスマルクも実際に撃破していたようだが、その他にもガングートも撃破済みらしい。他にもプレイヤー名が出てきたが、アルストロメリアには興味がないようだ。

とにかく、ビスマルクとガングートは注視する必要性があるだろうが――。

《暗証番号を確認しました。200円分のチャージを行います――》

 この部分の演出は何とかならなかったのか――とアルストロメリアも困惑はするが、こればかりは仕方がない。

ゲーム依存症のような症状が問題になり、それがARゲームやイースポーツの勢いにも影を落としているのだ。

そうした問題をクリアして、市民権を得てこそのARゲームである――と言うのがオケアノス側の考えらしい。

 確かに、オケアノス側が様々な闇とも言える部分を徹底的に洗い出し、犯罪に悪用されないように考えている事は評価に値する。

果たして、それだけで本当に問題は解決されるのか? アルストロメリアはプレイヤーの意見を放置して進められているような計画に――疑問を抱く。

単純に芸能事務所AとJによって炎上マーケティングのターゲットにされ、オワコン化しては元も子もない。

それを恐れて、様々な部分で規制ばかりを強化しているようにも見えなくないだろう。それが現在のARゲームに関する世間一般の認識だろうか?

「一体、ARゲームで何が起きているのか――」

 様々な部分で疑問は出てくるが、今はステージ2のボスエリアへ急ぐ方が先である。

ARバイザーに表示されたマップを手掛かりにして、彼女は先へと進む。マップと言っても簡略的な物であり、最低限の情報しかないが。



 その一方で、既にステージ2のボスを攻略したと言う情報も飛び込んでくるが――そのプレイヤーとは、まさかのランスロットだった。

おそらくはアイテム収集のついででボスを撃破した――と言う感覚だろうか。この人物が、何故にファンタジートランスへ姿を見せたのかは――憶測の情報でしか存在しない。

ランスロットの使用するARガジェットは、明らかに一般プレイヤーが手を出せないようなレベルのチューンが施されている。

これを不正ツールと言って通報するか、彼女用の専用ガジェットと言う事で放置するかは――プレイヤーの知識量次第で変化するだろう。

しかし、ネット炎上させて芸能事務所から報酬を得ようとしたり、まとめサイトのアフィリエイト収入で稼ごうと言う人間は――間違いなく、情報を知っていても前者を選ぶ。結局は、そう言う物なのだ。

 その為か、プレイヤー側がランスロットに接近しようと言う事はしなかった。逆にランスロットを知らない人物ならば、物珍しさに近づくだろう。

明らかに重装備のアーマーでスピードが必要とされているような楽曲もクリアしているので、コツを知りたいと言うのもあるのかもしれない。

ARゲーム用のアーマーは基本的に重量と言う概念がない。それに、中継映像ではランスロットの現在位置はジャミングがかけられたかのように特定出来ないのも大きいだろうか。

何故、運営サイドはここまで情報を隠そうとしているのか?

『ここにもいない――』

 男性ボイスに変換された声――明らかに何かの事情を持っている可能性は否定できないだろう。

ボイス自体は元々の声を男性風に変えた物ではなく、男性声優が吹き替えている位には若干自然に変換されている物だ。

ARゲームでは機械的な音声で実況を加えたりするゲーム実況と言う物が、他のジャンル同様に存在する。

しかし、それさえも凌駕するような技術のボイスチェンジャーには『魔法じゃないか』と言う声がまとめサイトで書かれるレベルだ。

『一体、何処にいるのか――アルテミシアは』

 ランスロットの探しているのは、アルテミシア。ゲームの説明ではステージ3の奥深くにいると書かれているが、それ以上の説明はない。

ビジュアル的にもファンタジーなテンプレ魔女とは違った、異彩を放つデザインを持っている。

 アルテミシアがラスボスと言う位置づけらしい事はサイトでもぼかす形で明言されているが――それ以外の部分は伏せられたまま。

単純にステージ3のボスなのでは――と言う話はネット上でも拡散されているのだが、ソース不明の情報が独り歩きしている可能性もある。

それを踏まえて、ラスボス以上の事は下手に拡散しないように――とARゲームプレイヤー内では有名だった。

一種のアドベンチャーゲームにおける結末をネタバレするレベルとは違うが、拡散したがらないのには何か理由があるはず。

【アルテミシアがアドベンチャーゲーム系で言う犯人ポジションではないのに――】

【しかし、その外見を含めての情報は公式以上の物がない】

【それを拡散仕様としたまとめサイトが謎の閉鎖をした位だ】

【謎の閉鎖? それって、どういう事だ】

【炎上を起こしたような有名サイトのクローンサイトと言う理由で閉鎖したのではなかったのか?】

【その閉鎖理由は、おそらくは嘘だ。本当の理由はアルテミシアの正体絡みらしい】

 ネット上では、こうしたテンプレ的な記述のまとめサイトが広まっている。

これによって、アルテミシアの正体は一部の遭遇したプレイヤーだけが知ると言う情報にとどまっていた。

何故、ここまで厳重に情報を隠したがるのか? これを知りたいと思う人物はいるのか――。

知りたいと言う人物がいるからこそ、その記事には価値がある。実際、芸能人のスキャンダル等を取り扱った週刊誌がどうなったのか――その反響を見れば一目瞭然だろう。

しかし、ARゲームのプレイヤーは別として、全く興味のない一般人がアルテミシアに興味を持つかと言われると――疑問があるだろう。

おそらく、そうした人間に対してもアルテミシアの存在を明らかにする事で――と言うのがまとめサイトのやり口かもしれない。

「アルテミシアの正体に、運営側が何かを隠したい意図が見え隠れするな」

 あるまとめサイトの管理人は、このようにサイト内で言及していた。

しかし、彼はアルテミシアの正体を知らないし、実物も見た事がない。つまり、彼はゲームを未プレイという立場でこの記事を書いているのである。

そうした知識を持たない人間がネット上を荒らしまわる事が、どういう事を引き起こすのか――。それを運営サイドが知らないはずがない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます