第8話『エンカウント』


 アルストロメリアは先へ進むのだが、そこでは唐突とも言える襲撃者が姿を見せた。

 姿も明らかな雑魚キャラを連想させる気配で、倒してくれと言わんばかりに増えてくる。


 しかも、このエリアは横幅が5メートル近くはあるかもしれないが――敵の出方次第では、積みの可能性も否定できない。


 その状況でアルストロメリアは、それらを次々と手持ちの50センチ程の長さのブレードで――なぎ払う。


 なぎ払った雑魚に関しては、CGが砕けるような演出で消滅していく。どうやら、雑魚に関してはプログラムで動いていると言うべきか。


(これだと、あの時と変わりがないような――)


 アルストロメリアは何か妙な感覚を持った。このシステムの類似ゲームをプレイした覚えがある、と。


 最初にプレイしようと思った際、エラーが発生して途中で強制ログアウトに近い状況になった事を思い出す。


 基本的にARゲームではアンテナショップでデータのアップデートを行う事は――あの時にカトレアからも言われていた。


 しかし、新規プレイの場合は機種によって自動的にデータが作られることだってある。なのに、エラーが出たのはどうしてか。


(リズムゲームだと、単純なデータ引き継ぎであれば筺体でも出来るのに――)


 アルストロメリアは改めて思う。ARゲームと言う事を差し引いても、色々な部分で不便な個所が存在すると。


 しかし、それに対して不満をぶつけるような人物はいない。仮にいたとしてもネットを炎上させる目的で書き込みをするような悪目立ち勢力だけだ。


 何故、そこまで厳密にARゲームはネットと言うよりもSNSで炎上するような事が少ないのか?


「まずい――気付かれた?」


 次々と倒していくにつれて、増援が増えているような気配を感じる。考え事をしながらのプレイは、やはり集中力を欠くのか?


 プレイ中に負けフラグを意識してプレイすれば、それに飲まれる可能性も否定できない。だからと言って、無心でプレイしても楽しいのか――という問題もあるだろう。


 それに加えて、ARゲームを純粋な気持ちだけでプレイ出来るのだろうか――と言うのもある。


 しかし、ここで足止めをされていてはタイムオーバーは避けられない。その為か、アルストロメリアは――奥の手を使う事にする。その奥の手とは――広範囲型の武器ではなく、別の手段だった。


「これなら――!」


 咄嗟に彼女が展開したのは、有線式のシールド型クローアームである。これも過去の作品で使用していた武器でもあった。


 どうやら、アーマーに関しては引き継ぎ不能だったのに対し――武器関係は引き継ぎが出来ていたようだ。これをカトレアの手腕と言っていいのかは微妙だが。


 

 何とかして雑魚を撃退し、矢印の指示に従って先に進むアルストロメリアだったが、あるデータを見て、若干の不安を感じる事になる。


 それは、雑魚敵を撃破している際に流れてきたスコア速報の様な物。それを見ると、自分のスコアは――。


「スコアが――上がっていない?」


 このスコアには別の意味でも焦っていると言ってもいいだろう。順位は非公開だが、スコアだけみると――最下位から数えた方が早い可能性もある。


 それだけではない。ログインしているプレイヤーの人数によっては、理論値スコアを出しただけでは上位が遠い事も意味している。


 どのような計算方法なのかは分からないが、雑魚敵を倒している割にはスコアが上昇しない点は痛い。


 リズムゲームパートのスコアと別物であれば、ヘルプにも記載がある。しかし、今のタイミングではヘルプを見ている時間も惜しい――。


 スコア関係に関してはチュートリアルでも言及されていなかったので、仕方がない部分もあるかもしれないが――これは明らかに自分のチェックミスなのかもしれなかった。


 しかし、1曲目が理論値だったのに2曲目は――スコアが微妙だったのが、スコアが伸びない原因なのか?


 もっと別な部分でチェックし忘れの要素があるのではないか――アルストロメリアは、だんだん疑心暗鬼になりつつあった。


(ちょっと待って。これって、確かメインジャンルはリズムゲームだったはず――)


 疑心暗鬼になりつつあっても、アルストロメリアはリズムゲームをプレイしている感覚だけは失っていない。


 そして、スコアが上がらない理由はリズムゲームパート以外はスコア集計対象外だった事――。スコア速報が楽曲を対象にした物と早く気付けば――という思いはあるのだが。


【案の定だな】


【1曲目が理論値を取れても、総合スコアで決まるのであれば――当然の結果と言うべきか】


【しかし、演奏失敗が続けばペナルティでスコアが減るのでは?】


【演奏失敗の連続でスコアを稼ぐような手段は使えないだろう。つまり――】


【クリアが出来なければ、スコアは上昇しないと?】


【アルストロメリアは1曲目は理論値だが、2曲目は――おまけステージに近い。本来の2曲目ではない事に気付くか――】


【動画を見ていたら、コメントでアドバイスしている事になるだろうが】


【プレイヤーが、この動画を? それこそメタ視点だろう。違うのか?】


 動画には様々なコメントが飛ぶ。中には、アルストロメリアのスコアに言及するコメントもある。


 しかし、肝心のプレイヤーに外部のコメントがチェックできるのかと言われると――ソレは出来ないだろう。 


 あくまでも動画におけるコメントをチェックしようにも、センターモニター等の施設が近くになければ――チェックは難しい。


 逆に動画を確認出来るなんて事は、それこそガーディアン等の不正監視要員以外はありえないだろう。

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