#6

 日が、差していた


 何もかも無くなってしまう様な、そんな日が差していた


 そんな日に向かって微笑む人が一人


 「ありがとう」


 彼が、どんな運命で、どんな人生で、彼女を苦しませても


 彼女は、これで良かったと――


 そう、心に誓う


 我が儘を言えるなら、彼女は


 いや、彼女の本心は


 行かないで


 戻ってきて


 そう嘆くだろう


 高校三年生の息子がいる家族が


 引っ越しの末に事故で亡くなった件から


 三年が立とうとしていた


 彼女が最後に見たのは


 苦しそうに、歪む顔


 それでも、愛に溢れていた。


 最後が笑顔じゃなくても


 逢えなくても


 彼女は、その苦しみを胸に秘めて


 彼を想う


 「……ありがとう」


 もう一度、彼女は呟いた


 これで、良かったのだ


 もう一度、心に誓った

 

 何度誓っても足りないくらいに


 彼女は墓の前で手を合わせた


 そして


 何もかも焼き付くす様な日差しの下で


 歩き始めた


 彼女の足は


 懐かしい校舎


 ――いや


 懐かしい、図書室へ向かっていた


 


 


 

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図書室の灯り MinaMi @Mi7Mi

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