#5

 町野が、引っ越しする。


 「図書室は、君に任せる」

儚くも、何かを決めた様な瞳。

「……嫌です」

視線を逸らしながら、鈴木は言った。


 「……貴方がいなくなったら、図書室が…悲しむ」

「僕にはもう後戻りの選択肢は…残されて無い」

諦めた様に言う町野。

それに対し、何とか刃向かう鈴木。


 「……強制的じゃ…無いですか」

声を震わせ、俯いた鈴木にさほど驚かない町野は言った。

「僕がいなくても良…」

「良くないっ!」

鈴木は声を張り上げた。


 「わた、しは……」

「…ごめん。いつか――逢いに行くから」

鈴木は泣いていた。

涙も声も出ていなかった。

でも、確かに泣いていた。

 

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