#3

 「ねぇ見て、早村はやむら先輩だ!」

「何言ってるの。早村 達人たつと様でしょ」


 …うるさい。


 移動教室中、私の前を歩いていた女子集団。

勝手にファンクラブ…?まで作っている集団の前に居るのが、早村。一つ上の先輩らしい。

"学校一の王子"なんて言われてるけど、興味も湧かない。

それに、格好良いのかどうかも私には分からない。

第一、先輩と言う目上の人に対して失礼だと思うのだけれど。


 「……」

早村の隣に居た友達が、囲まれる早村を置いて歩いて行った。

「あ、おい颯!」

それに気付いたのか、早村は輪を抜け出して友達の隣に戻った。

愚かだ。

置いて行かれたく無いのなら、女子集団を無視していれば良いのに。そんなことも考えられないなんて、本当に先輩なのだろうか?

"学校一の王子"…。見損なった気がする。元々興味なんて無いけれど。


 「あの人も格好良くない?」

「あぁ、町野颯?あいつは駄目でしょ。図書室引きこもり野郎だもん。でも早村達人様の幼馴染みで、仲良いらしいよ」


 図書室、引きこもり野郎。

それってまさか。


 「へぇ。図書室引きこもり野郎なら確かに駄目だね。やっぱ早村達人様は違うわぁ」

許されることなら、今すぐ女子集団を殴ってやりたい。

図書室引きこもり野郎の何が悪いの?

本の良さも知らないくせに強気なこと言いやがって。

早村何か友達に置いて行かれたくないのに女子集団に構う、私以下の頭脳の持ち主なのに。


 …というか、あの人年上だったのかと少し驚いた。

名前すら知らなかったけれど。

ただ、その話題も興味は無かった。


 町野 颯、と言っていた気がする。

先輩ということは名前を気軽に呼んではいけない。

元々…呼ぶ気も無い。

そもそも、あの人が居なくたって図書室は生きていける。

あの人が居なくたって。

私は大丈夫。



 ――そう、思っていたのに。

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