図書室の灯り

MinaMi

#1

 「……」

静かで音の無い図書室。

図書委員の少年――町野まちの はやての息の音すらが太陽にまで届きそうだ。

はっきり言って図書室に人気は無かった。町野はただ視線を本に落とし、チャイムが鳴るのを待っているのだった。


 そんな日常を前にした町野にある変化が訪れたのは、いつだったろうか?


 カサッ


 視線を落としていた町野はある音に気付き、ゆっくり視線を上げた。

そこには、年下と思われる少女がいた。

名札には"鈴木すずき"の文字。


 「…何か」

町野は邪魔者を前にした様に言った。

「本を見に」

素っ気ない言葉に素っ気ない言葉。しかし鈴木は表情一つ変えず、奥へ進んでいった。

実際、この学校の図書室は広くない。灯りもほとんど無い。ほこりは被らぬ様、町野が掃除はしているものの、並べられた本にほとんど新しい物は無い。


 「……」

町野は視線を本に戻した。静かで存在を感じないのは逆にありがたいとでも思っているのだろう。


 「……これで」

いつの間にか差し出された本を町野は受け取った。

「……はい」

町野が返した本を抱え、鈴木は何も話さずに出ていった。



 


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