闇夜の暗闇

マサムネと風呂に入って部屋に通された。

折角スッキリした気分が最悪なものとなる。

どんよりときのこでも生えてそうなムシムシした部屋に、今五月なんだけどね!?

まだ夏じゃあないよ。

ゴミ袋もたまっていて、紫色のオーラを纏う部屋に心なしか変な匂いがする気がする。


「何この部屋...前来たときとだいぶ違う気がするんだけど」


「あぁ、それは拙者が排泄と食事以外は全く動かずゲームに熱中していたからでござろうな」


「このゴミの山は何」


「あぁ、それは"優遇"でござるよ。なんでも好きなもの食べてもいいと言われたでござるからな。拙者毎日ハンバーガーを食べていたでござる」


「いいなぁ」


「ゴミは集めて部屋の外に出しておけば学校行ってる間に片付けてもらえるじゃん」


そう、自分でゴミを捨てに行ったりしなくてもいいのだ。なんて最高で楽なシステム。


「拙者全く外に出てないでござるからな。ゴミは最初散らばっていたのでござるが、さっきノックが聞こえたので急いでゴミ袋に詰めこんだのでござるよ」


だから出るのが遅かったのか...。


ゴミ袋の片付けはあくまで学校行ってる間に、なのでとりあえず今日の夜の間はこのゴミ部屋でマサムネと話すしかないな。


僕の部屋に呼んでもいいけど、僕と話す間も頭につける青いゲーミングヘッドホン(猫芥子と違ってマサムネのは青い)を装着したままだし、風呂に入ってる時も早くゲームをやりたくてウズウズしている様子だったからな。


相当面白いゲームなんだな。

"才能あるもの"って。


「ゲーム、そんなに熱中してるのか?」


「まぁ、なかなか拙者が今までやって来たゲームとは違うタイプで新しいタイプのゲームでござるからなぁ」


心底楽しそうに答えるマサムネに、本当にゲームが好きなんだなと微笑ましくなる。

好きなことの才能を持っているってすごいなって思うし、羨ましいと思うよ。


「途中からだけど、見るでござるか?」


「あぁ、いいよマサムネ。気になるけど、僕は猫芥子のゲームを毎日見せてもらっているんだ。それはマサムネに悪いからさ」


「...亀有殿は優しいでござるな。でも拙者は構わないでござるよ、むしろ拙者がどこまで進んだか見て対戦相手殿に伝えて欲しいものでござるな」


自信満々に笑うマサムネに、相当この数日でやりこんだことがわかる。


「そ、そうか...?」


実はちょっと、いや物凄く気になっていた。

猫芥子と僕がせっせと世話している亀有君が最終的にどこまで素晴らしい人間に成長できるのかどうかという事を!!!

マサムネはこれだけ自信満々なのだ。

彼のキャラを参考にして亀有君も育てていきたい。今彼はニートのままだが、最近運動を始めて頑張っているんだ。


何より愛着のある亀有君だが、絶対マサムネの育てているキャラよりできた子に育て上げるんだ!


「はい、拙者の育てている「闇夜の暗闇」《ダークシャドウ》でござるよ」


名前からしてちょっと嫌な予感はしていた。


黒髪に赤いメッシュ、赤と黒のチェック眼帯、黒いカラスみたいなコートに、羽のようなファーがついている。指にところどころ穴が開いているレザー手袋。


「いや待って!!予想外すぎて情報が追いつかないよ!?」


「ほら、ダークシャドウ挨拶するでござるよ」


「いやいや何!?嘘だろ!?」


「いい闇夜だな...そう思わないか?」


「どういう意味!?今普通に夜の8時くらいなんだけども!もうすぐ夕ご飯の時間なんだけど」


「はじめまして、こんにちはって言ったでござるよ」


わかるかよ!!ふざけんな。


「さっきはいきなり切ってごめんでござる。ダークシャドウ」


「気に病むことはないよ魂の片割れ《ソウルメイト》...彼は君の友人ブラザーかい?」


「そうでござるよ。今日は拙者を心配して来てくれたのでござる」


「ほう...それは良きブラザーを持ったな...ま?俺以上の奴は居ねえと思うけど...な」


「そうでござるな。今も昔も、ダークシャドウとは、そうるめいとでござる」


ダークシャドウ(?)と話すマサムネはとても楽しそうで、久しぶりに再開した親友と話しているような雰囲気だった。

今も昔もって事は...もしかして。


「なぁ、マサムネ、もしかしてダークシャドウって、マサムネの前に言ってた親友の」


「そうでござるよ...神様に、学校に殺された親友でござる」


殺された...か。

マサムネにとってはそうだろうな。マサムネは学校や神を憎んでいるんだろうし。


「拙者は、最初は普通にこのゲームをプレイしようと思っていたのでござるよ。でも...ニートを育てているうちに、どんどん彼を自分好みにできるってわかって、拙者気がついたら、消えた親友の面影を追いかけて、彼を作り上げていたのでござる」


「マサムネの親友こんな感じだったんだ..ってあれ?でもマサムネの親友ってござる口調だったんじゃないのか?」


「あぁ、いや...ダークシャドウは彼のキャラ名でござるよ。普通にチャットの時はござる口調だったり、敬語だったでござる」


いやこんなキャラでゲームしてて素は敬語ってかなりギャップすごいな。

オンラインゲームでよくいるキャラになりきるタイプの人だったんだな。


「拙者、このダークシャドウの格好よさに憧れて、ゲームの世界にのめり込んで言ったのでござるそれで」


「格好いいだなんて...な?また罪を重ねてしまったようだ」


ちょっとうるさいよダークシャドウさん。


「その、拙者リアルでは寺の息子だったのでござる。ゲームとは無縁で、ふぁすとふーどっていうのでござろうか。ハンバーガーも食べた事もないような、そんな暗い男だったのでござる。いわゆるインキャってやつでござる」


「別にハンバーガー食べてないからって暗い男ってわけじゃあないけどな」


「でも、拙者もお年頃少しそういう悪い事に手を染めることをしてみたかったのでござる。両親には体に悪いとか、お豆腐を食べなさいとか言われてたでござる」


「別にハンバーガー食べる事は悪い事じゃないけどな!?」


ハンバーガー食べたい息子に豆腐を進める両親はかなりやばいな。

相当寺の息子として禁止される事も多かったんだろうな。


「でもある日、学校でPCの授業があって調べ物をしていた時にあるオンラインゲームを見つけて、拙者、そのゲームの「現実とは違う自分に、知らない人達と世界に飛び出して友達を作ろう」ってフレーズに惹かれて、授業中にちょっと遊んでみたのでござる」


悪い事したいお年頃だもんな。

不登校の僕は何も言えないからそのままスルーするよ。


「そうしたら、拙者...自分とは違う自分で友達ができて、その授業の一時間でギルドに入ったのでござる。そのギルドマスターがダークシャドウ。拙者の親友でござる。拙者はダークシャドウに「また明日も来いよ」と言ってもらって、すごく嬉しかったのでござるよ。だから拙者、その日に溜めていたお小遣いでマイパソコンを買ったのでござる」


マサムネって意外と行動力があるタイプなんだな。


「そこからもう拙者はゲームにどっぷりで、大会で優勝したり、ギルドマスターを掛け持ちしたりもしてたでござるな。いつのまにかゲームの天才として人類の選別で生き残るまでにもなっていたのでござるよ」


人類と選別のいう言葉に、マサムネは影を落とした。

マサムネの憧れていた、マサムネのゲームを大好きになるきっかけのギルドマスター、ダークシャドウが、学校の入学式にこなかった為にこの世から消された。


「毎日、忘れないようにチャットログを確認しているのでござる...ダークシャドウを見ていると、たまに涙が、出るのでござる。でも、こうして彼と過ごして、彼の事を思い出せるこのゲームに出会えて、拙者本当に嬉しくて、楽しくて。だから、絶対に負けないでござるよ」


マサムネは、僕をまっすぐ見た。


「拙者とダークシャドウは絶対に負けないでござる。例え亀有殿が対戦相手の猫芥子殿に肩入れしているとしても、容赦はしないでござる。拙者は彼と共に戦って負けた事がないのでござるよ。一回も」


***


マサムネと、ダークシャドウの絆は本当に深いものがあるように感じる。


僕は、今日も向かった猫芥子の部屋でマラソンをヒィヒィ言いながら走っている亀有くんを見ながら鳥肌がたった。


「猫芥子が、勝てるわけがないんじゃないか...これ」


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