僕は何を協力すればいいんだ?

「そうだな。春川君に花柔木さんが協力してくれるらしいって伝えておくよ」


「あ....あぁ、た、頼んだぞ」


彼女の恋の行方は僕にかかっているのだろうか。そうだとしても彼女の恋はいい結末に向かうのは思えない。

恋の相手は巨乳の女の子ですよなんて言えるはずがない。かといってやめておけよ〜なんて僕が軽はずみに言えるわけもなく。


僕は、るんるんっと立ち去った花柔木さんの後ろ姿を見つめて立ち尽くしていた。



***


僕の生活はTKBで戦っている猫芥子と春川君に協力する事中心になった気がする。

学校から帰宅したら夕食を食べ猫芥子の部屋で亀有君を見守る。


今日の亀有君はポテチを食べず、運動を始めていた。偉い...とても偉いよ亀有君!


「亀君の説得が効いたみたいでね。今日起動してみたら運動してたんだ」


「すごいじゃないか...よかった。あれ?でもこれって音声認証で主人の声しか聞かないんじゃなかったか?」


「そんな機械的な事じゃなくてさ、亀君のハートが彼に届いたのさ〜ほら!みてよ彼の光る汗を!夕日に向かって走る姿を!」


「おぉおお!!偉い...偉いぞ亀有君!」


僕達は燃えていた。

スポ根漫画のごとく、走る亀君を応援し、転んだ彼を励まし、立ち上がる彼を褒め称え、順調に亀君の育成は進んでいた。



***


深夜2時になったら風呂に向かう。

春川君と落ち合い、彼の部屋へ。

部屋に入るなり早速僕は春川君に花柔木さんの話を持ち出した。


「花柔木さんが、春川君のTKBに協力したいらしいんだけどね」


「....何で?」


一気に空気がピリッと凍りついた。


「春川君が委員長として頑張っている所を見ていてその、感動したらしくてさ。協力したいんだって」


「.....何だいそれは」


春川君は、いつものニコニコした表情とは打って変わって呆れたようにため息をついた。


「それは嘘だろうね。俺はこの通り見た目で判断されやすいからさ。感動とか、委員長としてとか、本当はこれっぽっちだって思ってないだろうさ」


「そ、そんな事ない!!」


僕は思わず叫んで立ち上がっていた。

だって、僕は見ていた。あの本気で恋をしていた花柔木さんを。本気で春川君に恋をしていた彼女を。


「....君がそんなにムキになる事ないじゃないか?はは、まぁ俺も言いすぎた所はあると思うけどさ。でも、俺こういう事今まで山程起きてきたからさ?」


僕は春川君にいつもの笑顔でなだめられとりあえず座った。


「花柔木さんは、本気で春川君に協力しようとしてるんだよ....」


「.....亀有君って花柔木さんと仲悪くなかったっけ?何でそんなに肩を持つようになったの?」


一瞬だが、先程の笑顔が消え確信をついてくるように真剣な表情になる春川君に、


「か、彼女の真剣に恋をする姿勢を見ていて心が動かされたのさ」


「ははっ真剣に恋をする姿勢、だなんて亀有君らしくない言葉だね...」


確かに僕らしくない。

僕は嘘や誤魔化しが下手くそだから春川君の揺さぶりでうっかり話してしまいそうで怖いんだ。

花柔木が春川君の事が好きだからこのTKBに協力したいのだと。


「ま、協力してくれるとしても俺は彼女の事好きにならないけどね。亀有君を利用して協力したいっていってくるようじゃあ。自分で言いに来いって話だろう?」


バレてる!!!!!!!!!何で!?


「いや、そんな顔されても君さっき思いっきり彼女の真剣に恋をする姿勢に心動かされたっていってたからね」


「僕そんな事言った!?」


「あはははは!!自分で思いっきり言ってたじゃん!!」


そんな大笑いされても僕は言った覚えがないぞ。あっわかった。また僕の動揺を誘って何か言わせるつもりだな。誘導尋問だな受けて立つぞ。


「何で花柔木さんは自分で協力するって言いに来ないのかな?」


「そ、そりゃあ、あれだろ。色々彼女も思う所があるんだろう」


咄嗟のことに上手い返しが見つからない。


「彼女あぁみえて結構ウブそうだし俺に話しかけるのも恥ずかしいから亀有君に頼んだって感じかな?」


こいつエスパーかよ.....。


「はは、あたりかな?図星かな?」


本当に楽しそうに笑う春川君を見て、僕は目をそらして口をつぐんだ。

もう絶対何も言わないからな。


「図星のようだね。協力って言っても何をしてくれるつもりなんだろうなぁ彼女は」


確かにそうだ。僕も春川君に協力を頼まれたが、自分が具体的に何をするか分かっていないぞ。


「僕は何を協力すればいいんだ?」


「...........亀有君は何をしてくれるの?」


「何故質問を質問で返すんだ!そもそも春川君が僕に協力するように言ったんだろう」


「ははっまぁ、確かにそうだね...」


語尾を落として、落ち着いた声色で話す春川君に、僕は春川君は本当は僕に協力してほしい事を何も考えてないんじゃないか?何て考えが浮かんでしまった。

僕の天才名も聞いて来ないし、僕みたいな奴を協力者に選ぶ事自体がよくわからない。

裸を見られてしまって勢いで言っちゃったって言った方がなんとなく説得力があるよなぁ。


「こうして、俺の部屋に来て話してくれるだけでいいよ」


やっぱりだ!!!僕に協力してほしいと言ったのはやっぱり裸見られたから勢いで言っちゃったんだろうなぁ...。

申し訳なさで僕の背中は丸くなっていった。


「あれ?どうしたの?何か背中が猫みたいに丸まって来てるよ」


「.....何でもないよ。でも、そんな事でいいのか?」


「そんな事なんかじゃないよ。とても大助かりさ。また何かあれば協力してもらいたい所だけどね。俺にはまだ彼女に対する対策が立てれてないからさ」


もう投票まで時間がないけど、大丈夫なのか?


「僕に、何か協力できることがあれば言ってくれよ」


心から、本心から出た言葉だった。


「ありがとう。やっぱり俺は君に協力者になってもらえてよかったと思ってるよ」


「何で?」


「正直者で優しいからね。君は」


にっこり笑って春川君は僕の方へ寄って来た。


「ど、どうしたんだ?」


僕の手をとると、春川君は優しく微笑んだ。

その微笑みは、いつものイケメンの春川君の笑顔とは違って見えた。


「これからも、よろしくね亀有君。俺は君の事信じてるからさ」


「あぁ、こちらこそだ」


僕も力強く春川君の手を握り返す。

彼は変わらず笑顔で続けた。


「ところで君、人に嫌われる天才っていうの。嘘だよね?俺には本当の天才名を教えてほしいな?協力関係になるんだからさ」













何で知ってんの......?

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