いつものように俺は猫を被って笑った

「朝のHLを始める」


先生の声かけの後に、ガラリと扉が開いて理事長の娘正門さんと、秘書らしい日々垣さんが入ってきた。

日向マサムネの席をじっと見つめていた俺、猫芥子弥助もそっちに目がいく。


(この流れって...もしかして。


「このクラスで新たなTKBが開催されます」


(まさかの同時開催かよ...。



***


新たなTKBの内容が、クソ程面白くないので萎えていた俺は、朝のようにぼうっと日向マサムネの空席を眺めていた。

もしかしたら今二人は一緒にいるんじゃないの?

全然猫芥子なんてダメダメだったぜって言ってたりするんじゃないの?


「猫芥子さん」


「ん」


声のする方を振り返ると、巨乳を揺らして雅ヶ坂さんが俺の机の上に散らばった大量の折り鶴を眺めていた。


「その折り鶴は、先生にあげる千羽鶴ですか?」


「あぁ、これ」


先生って...亀君そういや雅ヶ坂さんに勉強教えてたっぽいし、成る程そう言うことか。


「前に先生が倒れた時に渡していたのを思い出して...よかったら協力させていただいてもよろしいでしょうか?」


雅ヶ坂さんは、しゃがんで机に座っている俺と目線を合わせてきた。

成る程ね、この人も亀君の事好きなんかね。

亀君って女子の友達多いしなぁ。


「そうなの?よかったら私も協力させてほしいかな」


佐藤さんも前の席なのに話を聞いていたのか駆け寄ってきた。

地獄耳かな。


「あー...」


考え事をしていたら出来上がっていた赤い鶴を一羽手に取る。


「そうだ!今日はこれを持って皆で亀君のお見舞いに行こう!」


いつものように俺は猫を被って笑った。


***


学校が終わった後、亀君の部屋に集合した亀君のお見舞いズマスク装着三人組と俺は亀君の部屋の前にいた。


コンコンコンッ


返事がない。

やっぱり、亀君は日向マサムネの部屋にいるのか?


「ま、まさか先生!あまりの高熱で起き上がれないのではないか!?」


お見舞いズの一人、雅ヶ坂さんが突然叫んで慌てだした。


「そ、そんな!!大変だよ!」


佐藤さんも動揺する。

なんなのこの二人亀君の事好きすぎじゃない?


「ば、馬鹿じゃないの?馬鹿は風邪をひかないっていうようにどうせ仮病よ、もしくは自分が熱だと勘違いでもしてるんでしょう。どうせアレのことだからそんなような事よ」


タンタンタンタンと右足のつま先で床を叩く明らかに動揺している初城さんは何でついてきてんの?

鶴折ってないよね君は。

手伝ってくれてないよね。

何ちゃっかり私も手伝いましたみたいなスタンスでここにいるの?


「ちょっと!寝てんじゃないわよ!」


ドンドンと扉を叩く初城さんを雅ヶ坂さんと佐藤さんが止める。


「やめろ!音が体にさわるだろう!」


「そうよ!脳が震えちゃうよ!」


ガチャリと唐突に扉が開いた。


「......い」


声はかすれ、はたから見れば何を言っているかわからないけど、きっと「うるさい」だろうな。

なんとなく読めるように君の気持ち。

本当に熱があるんだろう真っ赤な顔にマスク、冷えピタがずり落ちそうな黒ジャージの亀君は、いつもより死んだ瞳で俺を見た。


「.....に....れ」


「なにこれって、お見舞いに来たに決まってるじゃないか〜俺達は友達だろう?」


「.........お....」


俺達を見回して目を丸くする亀君に、俺は思わず笑ってしまった。


「あははっ亀君、急に熱なんて出しちゃってどうしちゃったのさ?あっちょっと失礼!本当だ顔火傷しそうなくらい熱いぞ!昨日俺と熱い夜を過ごしたばかりじゃないかー!あはは!」


顔が熱すぎてずれた冷えピタの隙間からおでこを触ると、本当に熱い。

こりゃ熱があるな。本物だ。

何で俺はちょっと安心してるんだ?


「.わ...ご........ね.........こ.....は......し.......よ」


「笑い事じゃねえよこっちは死にそうなんだよ?って、本当に仕方ないなぁ亀君は友達の俺が看病してあげるよー」


「猫芥子君もちゃんとマスクしてね」


佐藤さんが俺にマスクをくれた。


「これから黴菌の部屋に行くっていうのにマクスをしてこないなんてまともな神経してないわね」


初城さんは、一番に亀君の部屋に入っていった。



***


『ありがとうみんな。お見舞いに来てくれて。でも、俺は今声が出ないんだ。だからちょっと会話ができない。うつしちゃうかもしれないし、また明日来てくれ』


「.....................な......................て」


「待て何を言っているのかさっぱりわからないんだが?それより大丈夫か!?先生!


雅ヶ坂分かって!!!!


僕、亀有一人は昨日中ずっと僕とTKBで戦っていた相手を思い出そうと必死だった。

とにかく必死で、夜も眠れないくらいに。

全く思い出せなかったが、朝、代わりに高熱が出てしまって俺はベッドから起き上がる事ができなかった。


これ休んだら退学?ダメ?もしかして体調不良で欠席したらいけない?

一応学校に電話しないと。たまたま運が良くて近くにあった携帯を手に取る。


待って、連絡ができないんだけど。

学校の電話番号知らないんだけど。誰か助けて!


「.......て」


電話帳で誰かに連絡できないかと探すけど俺誰とも連絡先なんて交換してないし!!って....えっ!?あるじゃん。

天才育成....学校...ってこれ明らかに学校の電話番号だよな!?俺入れた覚えないんだけど怖っ!?何もしかして僕の知らない間に勝手に学校の電話番号入れられてんの!?はぁ!?

まぁ今は救われた。


電話をかけると、秒で犬飼先生が出てくれた。


「はい」


「..........い....」


「あぁ、亀有か?どうした?」


いやなんでわかるし!!助かるけどさ!


「............た.............て.........さ」


「了解、今日は休むように。すぐに看護の天才を向かわせる」


神対応!!!!!

犬飼先生大好き!!!でもなんでわかるの!!


という流れで、看護の天才である白衣を着た人が持参の鍋とカセットコンロでおかゆを作ってくれたり、冷えピタを貼ってくれたり僕を献身的に看護してくれた。

熱で頭がぼーっとしてよく覚えてないけど。


猫芥子達は、僕なんかを心配してまたお見舞いに来てくれたんだ。

感謝しかない。天使佐藤さんもいるし。


「.............う」


「亀君がありがとうっていってるよ」


だから何でわかってくれるの猫芥子ありがとうだけどさ!


「大丈夫だよ亀君、俺達すぐ帰るけどさ、ここに来たのはお見舞いと、もう一個亀君に伝えることがあって来たんだ」


珍しく真剣な顔で猫芥子が言うものだから僕の心臓は跳ね上がる。


何だ?


「亀君が休んでる間に新しいTKBが開催されたよ。対戦相手はあの委員長と、クラスメイトの桃花愛子(ももはなあいこ)さんが戦うらしいよ」


「.................れ」


誰?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます