俺じゃないんだ!!!!

「決めた!決めたぞ猫芥子!」


ポテチの手を止めようとしない亀有君と猫芥子を交互に見た後決めた。


「何を決めたんだい?」


わくわくと目を輝かせる猫芥子に、


「今日から毎日学校から帰った後にこうやって猫芥子の部屋に来て一緒にゲームをすることにする」


「ほーう。そりゃまたどうして?」


嬉しそうにウキウキとこちらを伺う猫芥子に、僕は立ち上がって息を大きく吸い込んだ。


「亀有君の将来が心配だからだよ!!!!」


「俺じゃないんだ!!!!」


猫芥子は、自分を指差して叫んだ。


「酷い!酷いよ!今の流れだと絶対猫芥子君が心配だから!の流れだよね!酷い!」


「うるさい!くっつくな!亀有君の面倒をお前が見切れるとは思えない!僕もついて見るんだよ!」


僕の腰にしがみついてくる猫芥子を振り払い、亀有君を見る。

まだ彼はポテトチップスをまだ食べている。


「僕は...亀有君を助けたい」


「俺じゃないんだ!!!!」


「俺じゃないんだ!俺じゃないんだ!うるさい。わかったよわかった亀有君を救うことでついでにお前を助けてやるよ」


「俺がメインだからね!?今回の章は!!二章は俺のターンだって決まってるんだからさ!」


「必死なのは分かるがそういう発言はやめろ」


「だって...だってぇ」


「時間的にも寝てるやつもいるだろうし」


なんて言っては見るが全くの予想で時計なんて見る余裕はなかった。

部屋を見回して見るが、時計が見当たらない。


「あれ?この部屋時計は?」


「ないよ」


「何で!?」


「必要ないからにゃ」


平然という猫芥子の手首に目を走らせる。

腕時計...ついてない。


「朝とか、え?どうしてんの?」


「体内時計さ」


けろっという猫芥子に、僕は言葉を失った。というか、なんて言ったらいいかわからない。どういう反応を返せばいいのかわからない。


「そっか...すごいね」


とりあえず当たり障りのない反応を返しておいた。


「んで今体内時計的に何時なの」


「深夜3時くらいかな」


「何だ、まだまだ全然いけんじゃん」


つい最近までテスト勉強で徹夜を繰り返していた僕には割と余裕な時間だった。

いや平然とすんなり信用しちゃうのもどうかと思うけど今時間を知るすべが猫芥子の体内時計しかない。

流石に7.00とか言ったらちょっと寝なくちゃってなるけどさ。

でも最近ちゃんと寝るようになったからきついかな?


「いや、明日も学校だし早く部屋に戻った方がいいと思うよ亀君」


予想外にも真剣に、真面目な顔で猫芥子に言われたのでちょっと違和感。


「何で珍しくまともなこと言うの?」


「何で真剣な顔でそう言うこというの?」


質問に質問で返すんじゃねえよ。


「まーまーとにかく、また明日来てもいいからさ!今日はおひらきにしましょー!ね?」


僕の背中を押しながら、部屋への扉へと誘導していく猫芥子。

以外に力が強いぞこいつ完全にインドアキャラって感じなのに。


「まぁ、常人には深夜遅い時間かもな。じゃあな猫芥子」


「うん。また明日」


猫芥子に背を向けて扉を開けようとした時、


「ねえ、亀君」


「ん?」


振り返ると、猫芥子がルームウェアのポケットに手を入れて真剣な顔で僕を見つめていた。少し寂しそうにも見える。


「俺が退学したらさ、悲しい?」


その声は弱々しくいつもの陽気な猫芥子からはかけ離れたものだった。


「何言ってんだよ。当たり前だろ友達が学校からいなくなったら悲しいに決まってるだろ」


返事は聞かず、パタンと扉を閉めて部屋へと戻る。

戻る、戻らなくちゃ。

廊下で心臓を抑えて、握りしめた。

息が荒くなる。


「何で...こんなに苦しいんだ」


友達が学校からいなくなったら悲しい。

そりゃあそうだよ。

僕がTKBで戦った相手と僕は仲が良かったらしい。

友達だったんだろうきっと。

だから、こんなにも苦しいんだろうか。



***


「はっはー、まーったく亀君は」


猫芥子弥助は、頭の後ろで手を組んでごろんとベッドに寝転んだ。


「猫をかぶって聞いてみたけど、本当か?でも、あの表情。嘘をついているようには見えなかったけど...さて、どうだろうな。俺は亀有君はただの純粋な俺のクラスメイトでいて欲しいんだけどなぁ」


ヘッドホンをしっかりと装着し直した猫芥子は、スッと猫のように目を細めた。


「おい」


びくりと画面の中の亀有君は猫芥子を振り返る。


「もう食うのやめていいぞ」


「はい.....」


猫芥子は、腕を組んで目を閉じた。


(風呂で亀君に声を掛けようとしたら、俺の対戦相手である日向マサムネと一緒にいて、興味本位でついていったらあの二人──部屋に入っていったんだよな。


「スパイ説は、グレーってとこかぁ」


(亀君が俺の対戦相手のスパイか敵か味方じゃないのかどうか探ってみようと思ったけど、今の状況じゃなんとも言えないって感じだな。毎日部屋に来るって言った時は流石に疑ったけど、毎日の経過を見てあいつに伝えるって事だろうか?でも俺が対戦相手という事を知らされたのは今日のHM。

マサムネの奴と亀君が一緒にいたのは昨日の夜だった。あのゴスロリの予知の奴と繋がってたりするのか?


画面の前で正座をしてそわそわとこちらを伺う亀有君に、猫芥子は笑顔で言った。


「今日はもういいよ。おやすみ」


ほっとしたような亀有君に、更に口元を釣り上げる。


「明日亀君がきたらそうだな。カロリーを燃焼する為にマラソンをさせることにしたとでもいうからさ。ひたすら外走ってて」


「マラソンなんて僕...できないです」


「知らないよそんなの。運動能力10でも走ってれば適当に上がるでしょ。じゃ、頼んだよ」


これは育成ゲーム。

運動能力をあげればキャラも走るように走れるようになるだろう。

だが、そんな事猫芥子にはどうでも良かった。


「亀君、亀君。最高の暇つぶしになりそうだ。スパイなのか?そうじゃないのか?敵なのか?味方なのか?そういう存在を側に置くスリルがたまらない。こっちのゲームの方が楽しそうだよ」



***


次の日。


「あれ?亀有君休み?」


猫芥子弥助は、斜め後ろの席を見た後隣の席の初城を見る。


「どうして私を見るんですか...休み、じゃないですか?」


「今日は、亀有一人は高熱が出て欠席だ」


先生が亀有の席を見る。


猫芥子弥助は、空席の二席を交互に見る。

日向マサムネの席と亀有一人の席だ。


「ふーん」


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