才能あるもの

朝のHRで、理事長の娘正門と、その隣の三つ編み秘書子から発表があった。


「日向マサムネ、猫芥子弥助とのTKBを二週間後に開催します」


マサムネ!?猫芥子!?

僕は、扉側の席、三列目のマサムネと、斜め前の席に座って頬杖をついている猫芥子を交互に見た。


「なんで俺が勝手にエントリーされちゃってるわけ?」


不服そうに正門を見る猫芥子に、


「対戦相手の日向マサムネさんが、対戦相手を不問で申し込んだからです」


「はぁーん。成る程にゃあ。よっぽど自身があるんだね」


猫芥子は、今日機嫌が悪そうだ。

じとっとマサムネの方を見据えている。

マサムネは、目があってビクッとした後目を伏せている。大丈夫かマサムネ...。


「対戦内容は、TVゲームです」


「TVゲーム!?」


僕は、思わず声をあげてしまった。

ゲームの天才であるマサムネが対戦するのに対戦内容がTVゲームって、猫芥子が不利すぎるだろ!


「こちら側でこの対戦の為だけに制作したTVゲーム、天才育成シュミレーションゲーム"才能あるもの"略して才ものをクリアしていただきます」


才能あるものってタイトルからして何だかすごく難しそうだぞ。

大丈夫なのか?猫芥子...。


「くぁっ...」


猫芥子は、呑気にあくびをしていた。

なんて奴だこいつ...緊張感のかけらもないのか?

僕がTKBで戦った時はもっと緊張感に包まれていた気がするぞ!?


「才ものとは、凡人以下の引きこもりクソニート野郎を立派な才能あるものに育てるというゲームです。これから二週間後に才ものをプレイしたお二方のセーブデータを見せていただき、この二週間でより才能あるものを育てられた方が勝利です」


何そのゲーム。

考えた奴頭おかしいだろ何が面白いのそれ!


「今回も特別ルールを設けるのでご心配なく。どちらかが有利にならないように、不利にもならないようにするつもりです」


正門は、猫芥子を見て微笑んだ。

今回の特別ルールはやはりゲームの天才と戦う猫芥子に対して適応されるようだ。


「対戦参加者は学校生活が優遇されます。日向さん、猫芥子さんに関しては2人の戦いが最善の状態で行われるように学校としても協力します。二週間学校を休んでゲームに取り組んでいただく事も勿論可能となります。クラスとしても協力するように」


三つ編み秘書子が、クラス全員を見てそう告げる。

二週間丸々休んでゲームするだなんて、学校行かなくていいなんて...最高すぎじゃないか?いいなぁ。

僕なんてテスト勉強だったよ。休んでまでテスト勉強とかしたくない。


「勝負する方にはゲームとゲーム機をお部屋にお届けいたしますので本日お部屋でご確認を」


「すいません」


マサムネが、唐突に挙手をして立ち上がった。


「どうされました?」


「二週間、お休みをいただいてもよろしいですか?」


マサムネは、正門と、三つ編み秘書子、そして犬飼先生を心配そうに交互に見た。

本気なんだな。

二週間徹底的にゲームに集中するつもりだ。


「構いませんよ。では、今から二週間の間戦休(いくきゅう)をとらせていただきますね。日向さんはお部屋に戻ってどうぞ」


微笑んだ正門は、猫芥子を見た。


「猫芥子さんはどうですか?」


「んー...そうだなぁ。でも、まぁ今んとこ、いいかな」


いいのか!?

猫芥子いいのか!?

僕は、顔で必死にうるさく訴えたが猫芥子には届かない。


「そうですか。また戦休がとりたくなった際はお声かけ下さいね。それではご武運を」


二人は教室を出ていった。

次のTKBは、ゲーム対決か。

暇つぶしの天才猫芥子弥助と、ゲームの天才である日向マサムネ。

どう考えてもゲームの天才に暇つぶしの天才の猫芥子がゲームで勝てるとは思えない。

しかも僕は、一回マサムネの部屋に行っている。マサムネの部屋を見る限り生粋のゲームオタクだ。極めている奴だ。


「なぁ、猫芥子」


「んぁ?」


「大丈夫なのか?」


「何が?」


「何がって、その、休み取らなくていいのか?」


猫芥子は、くるりと僕を振り返って背もたれ側を正面に、椅子に座りなおした。


「なになに?心配してくれてんの?嬉しいねえ」


ニヤニヤこっち見てんじゃねえよ。


「心配っていうか、まぁ、いやそうなんだけどさ」


「大丈夫だよ」


僕を安心させるように優しく言う猫芥子に、僕は不安を隠せなかった。

カーテンの後ろで荒い鼻息が聞こえる。

腐女子の天才、もとい妄想の天才の腐女子生徒...確か、豆、なんか植物っぽい名前だった。豆、豆種さんだ!

僕達をはぁはぁいいながら見ている。

完全に顔がイッちゃってる。もはや僕は豆種さんの方を心配してるよ大丈夫なの彼女。


「そうだ。そんなに心配なら今日俺の部屋来ればいいじゃん」


「え?」


「えっっっっ?////」


いや、僕と同じ返しなのに明らかに反応が違う豆種さん勘弁して。

あからさまに嬉しそうなのやめて。


「一緒にゲームで遊ぼうよ。どんなゲームかも見せてあげるよ」


にっこりと微笑んだ猫芥子。

僕もまぁ、ゲームは気になるし猫芥子もこう言ってることだし、断る理由もない。


「あぁ、いくよ」


「夜に二人きり交渉成立!ブヒャア!」


鼻血を吹いて倒れた豆種さんをヤンキー女子とかが介抱していた。

部屋にまでついてこないといいなこの人...。

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