おっぱいにも今日は関心が向かなかった

朝は7.00に起床し、準備を済ませ食堂へ。

食堂で一人、ちゃっちゃと朝食を済ませ、すぐに部屋に戻り登校準備だ。


僕、亀有一人は清々しい朝を過ごしていた。


「朝は苦手だが、早起きにももう慣れてきたな」

伸びをして、扉を開ける。


行ってきます。


玄関で、佐藤さんに出会う。


「おはよう、佐藤さん」


「おはよう。亀有君」


「昨日は言えなかったけど、本当にお疲れ様。すごいよ亀有君。テストで全部100点なんて。普通は取れないよ」


ぎこちなく微笑みながら僕を褒めてくれる佐藤さんに、


「ありがとう。佐藤さん」


僕も精一杯の笑顔を見せる。

教室に入るとクラスの皆が僕に注目する。

何だよ。僕を見ないでくれよ。


目を伏せながら席に着く。


「おはよう。亀くん」


猫芥子が目だけ僕を見てにかっと笑う。


「おはよう」


「元気がないね?折角昨日格好良く勝負に勝ったってのにさ!好きな女の子を守った王子様だよ!君は。もっと自信を持っていればいいんじゃないのかい?」


明るく話しかけてくれる猫芥子にも、目を合わせずに一言だけ。


「そうだな。ありがとう」


猫芥子は、それから何も言ってこなかった。

僕は、別に具合が悪いとか、気分が優れないとか寝不足とか、ましてや猫芥子が嫌いとか、そういうのでこんな態度をしているわけではなく──。


「どうしたのだ?せんせぇ」


雅ヶ坂がおっぱいを揺らして近づいてくるが、そのおっぱいにも今日は関心が向かなかった。


「なんでもないよ」


無理に笑顔を作ってみる。


「様子がおかしいぞ、先生。折角いい報告をしようと思ってたのに」


「なんだ?」


「テスト、全て90点以上だった。見てくれ!」


「うぉー...まじか」


ニコニコと初めて100点とったよ!と母親に見せるようにテストを見せてくる雅ヶ坂。


「こんな点数とったのは初めてだ!ありがとうせんせぇ...」


ぎゅっと柔らかい感触とふわりと女の子の甘い香りが顔を包んだ。

目の前が真っ暗になった。

あぁ、なんだこれ。

もう死んでもいいや。


「離れなさいよ。変態クズおっぱい星人!」


隣の席の初城が僕と雅ヶ坂を引き剥がした。

どうやら僕は雅ヶ坂に抱きしめられていたようだ。

初城、というかこの目──ゴミを見るような目はおそらく二重人格のもう片方。

毒舌モンスター、アイの方だろう。


「永眠して二度と目覚めずに死ぬことね」


「今の一言で僕は三回は死んでるぞ」


「私から抱きついたのだ。先生は関係ない」


雅ヶ坂が僕の前に立ち庇ってくれる。


「はぁ、付き合ってもないのにそんなクソ童貞に抱きつくなんて、相当なクソビッチね」


「く、くくくくクソビッチだと!」


かぁあ、と顔が赤くなる雅ヶ坂を、今度は僕がかばう。


「おい、雅ヶ坂は僕みたいに毒舌耐性ないからそういうこと言っちゃだめだ」


「ハン?クソビッチにクソビッチといって何が悪いのよ。それに、何庇ってんのよ。馬鹿じゃないの」


更に不機嫌になり、毒舌が過激になっていく。


「にゃはは、亀くん美少女に取り合いになってモテモテだねぇ」


声を聞いていたようで、前の席でこちらを振り返りもせずにケタケタ笑う猫芥子に、僕はスンと無表情に答える。


「何がどう取り合いなんだよ。初城と僕はいつもこんな感じなんだよ」


「鈍いんだなぁ亀くんは」


ぎろりとアイが猫芥子を睨む。

仲良くしてくれ。

まぁ、お調子者で人を煽るくせがある猫芥子と、自分から毒を吐き続ける初城は合わないのはわかるが。


ガラリと扉が開いて相変わらず表情が変わらない犬飼先生がフラフラと教団立つ。

走ってきたのか、息を切らし青白い顔をしている。


「はぁっ...ちっとこれから、体育館に全生徒集まることになったからさ。ま、行こうか」


なんだか、大事な用事っぽいな。


***


「皆さんに集まっていただいたのは、他でもない。知っている方もいると思いますが、先日TKBで死者が出ました。敗者ではなく、死者です」


正門理事長が、全校生徒の前で発表した事実。

生徒達がざわつく。それもそうだろう。


「それに伴い、TKBのルールに関して改めておさらいしていこうと思います。質問があれば受け付けます。ただ、亡くなった生徒に関しての質問は、ここで答える必要がないので答えかねます」


割と気になるんだが...。

殺されたってことか?それとも不慮の事故なのか?


「この学校は、天才育成強化学校...人類の選別で選ばれた才能ある若者しか入学できないこの学校で、皆さんは日々自身の才能を磨いているものだと思います。この学校には、その中で更にその力を伸ばす制度。そう、TKB──皆さんご存知の通り略さず言えば単位獲得バトルです」


いや僕の知り合いで才能を自主的に磨いてる奴いたかなぁ?

変態の天才である雅ヶ坂は常にあんな感じだし、猫芥子もそうだし、初城はあんなかんじだし、あれ?平常運転しかいなくない?佐藤さんは天使だし。


「この学校を卒業するには、最低でも二単位が必要です。相手に勝負を申し込み、教室の後ろにある申し込み箱に投稿し、そちらを天才管理委員会が確認、処理し受理した教室に向かいルールを説明します」


あのめちゃくちゃキツかった日々をあと一回も乗り越えないといけないのか...。

無事に生きられる気がしない。

本当に、アイの言っていた通り死にそう。


「そこで、対戦内容をどちらかが決めて挑むことができましたが、そちらのルールを少し改善しました。こちらで対戦内容を決めさせていただきます。勿論お互いの才能を磨く為のTKBですので、お二人の才能に合わせ、不利過ぎれば相手にそれ相応の有利な事柄をつけるようにします」


成る程。

自分達でも、どんな戦いになるのかわからないのか。


「そして、見事単位を獲得した方はわかるように、バッジを用意致しましたので、そちらを着用してください。バッジが多い人程この学園では地位が高く優遇されます」


正門理事長は、にこりと微笑んだ。


「優遇は、なんでも聞きますよ。単位1獲得者に、単位ゼロが暴言を吐いたとしましょう。それで単位1獲得者が相手を殴っても、蹴っても、はたまた再起不能にしてもこの学校は特に責めません。むしろ、単位ゼロの無能が、TKBで天才に勝利した本物の天才に暴言を吐く事こそがありえないのです」


初城が見つかったら大変なことになりそうだな。

僕は絶対そんなことしないし、話を聞くだけで胸糞悪いけど。


「ですが、下克上という制度を追加しました。下克上──それは、単位2獲得者と、単位ゼロ獲得者が戦い、勝利したらバッジを三個もらえるという素晴らしい制度です。当然下克上をした生徒は物凄く不利になりますし、単位を沢山持っている生徒に挑んだ場合、勝てないに決まっているだろうという難関が立ちふさがると思いますが、まあそれは下克上をした天才の頑張りによりけりです」


「な────」


クラスメイトからの視線を感じた。

重く、熱く、そして獲物を狙うようなそんな視線。




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