わからない問題は、飛ばしてわかる問題から解きましょう

僕は、絶対に100点しかとったことのない。勉学の天才堅道祐悟。


カリカリと心地よいシャーペンの音が響く。


わかる。

わかる。

これもわかる。

理解している。

できる。


テストの白紙の部分を見ると心底気分が悪くなる。

僕には、テストの問題で空白があるのに提出する奴の気が知れない。

どうしてテスト用紙に空白があるというのに平気に生活できるのだろうか?

僕だったら三日くらい寝込んで体調を崩すレベルだ。


「すごーい!堅道君ってなんでもわかるんだね!」


勉強ができるということは良いことばかりだが、悪いことがないわけではない。

褒められるし、テストで良い点が取れるし、僕は100点を取ることが当たり前だったから過去に100点を取り過ぎて他の生徒、及び先生に


「堅道はカンニングをしているんじゃないか?」


と、不正を疑われた事がある。

それは、テストで100点さえ取る事ができないクラスメイトの嫉妬や、羨望などがあったのだろう。

だが、仕方のない事なんだ。

僕はたまたま勉学の才能があって、100点しかとった事がなくて、他の人達はたまたまその才能がなくて、100点がとれなくてテストにも余白ができてしまう。

仕方のない事なんだ。


だが、そんな事を勉学の才能のない者にいっても理解してもらえないのはわかっている。

だから僕は程々に間違え、大体80〜90点後半のあたりをうろうろしていた。

どうして人間は、自分より理解を超えた凄い人を見ると、不正を疑ったり、非難したりしたがるのだろうな。勉強ができるだけの僕にはさっぱりだ。


先生に言われて学級委員長になり、他の生徒に勉強を教えて!と言われた。

100点ばかりとっているからだ。

委員長だから、勉強を頑張って100点を取り続けている。

どうしてそんなに頭がいいのか聞かれたときにそう答えた。

皆の模範となる委員長になれるように日々努力を続けていると。

半分本当で半分は嘘だ。

模範となる委員長となれるよう努力はしているが、勉強に関してはさっぱりだ。

教科書を一回読んだだけで覚えてしまうし、数式も一度読んだだけで理解してしまう。


だから、僕には勉強ができない奴の気持ちがわからない。理解できない。

どんな数式も、どんな英単語も、どんな公式も歴史に何があったのかも、元素記号も、実験の過程も結果も、わかる。

国語の授業で、「テストに余白を残して提出したクラスメイトの心情を答えよ」と言われたら、何かしら答えられるだろうか。

予想だが、恐らく「テストの日まで胃に穴が空くほどのストレスを感じて過ごすことになるのが辛い」とかではないだろうか?


ポタリと、汗が答案に落ちる。

また、ポタリと、ポタリと、ポタポタと。

どんどんそれは染みになり僕の答案に沈んでいく。


問1 あなたはこのテストを行う前にどれくらいの勉強時間を要しましたか?


「は......」


僕は、今きっと泣きそうな顔をしているだろう。

はは...なんだよ。これ。

なんだよ。



問2 あなたは、このテストを行う前どんな勉強方法を用いてテストに挑みましたか?


目がテストの答案に溺れ、速い、速い波にさらわれ彷徨っている。



問3 あなたの苦手な教科は何ですか?



「わからない問題は、飛ばしてわかる問題から解きましょう」


小学生の時に先生の言っていた事が理解できなかった僕は、思わず質問してしまった。


「先生、わからない問題を飛ばして、そのままわからないままだったらどうするんですか?」


「そうしたら、もっと賢くなれるよ。テストが返ってきた時に見返してお家に帰って復習したらもうその問題は絶対間違えないもの」


腰を低くし、僕に笑いかける先生に


「そうですか」


思ったような返答が返ってこなかった僕はがっかりした。


わからない問題を飛ばしたら100点が取れないし、この先生はそれでいいと思っている。何故教師なんてやっているのだろうか。




(わかる問題から解けないか?わかる問題...僕にもわかる問題は?僕にも答えられる問題はないのか?


問4 友人に数学の三平方の定理を説明するとしたら、どのように説明しますか?


息が荒くなる。

テストは5教科。

5教科を休憩なしで一気に解くこの学校のテストのスタイルに僕はとても好感を持っていた。

サラサラと書いていつも時間が余ってしまう僕にとって、5教科プラスクラスメイトが必死にテスト勉強に使っている休憩時間は暇で暇で仕方がなかった。

むしろ、テストの日イコール暇な日だったのだ。


「はぁ...はぁ....」


息が、苦しい。

最後の問題は....。


問5 テストでどうしても分からず余白ができてしまった時はどうしますか?


「う....ぁ....ぁあ」


「堅道、静かに」


担任の声が僕のドクドクと脈打つ脳に小さく響いた。

頭を抱え、顔をぐちゃぐちゃにした僕は今絶望の真っ黒な渦の中にいた。


問1 あなたはこのテストを行う前にどれくらいの勉強時間を要しましたか?


問2 あなたは、このテストを行う前にどんな勉強方法を用いてテストに挑みましたか?


問3 あなたの苦手な教科は何ですか?


問4 友人に数学の三平方の定理を説明するとしたら、どのように説明しますか?


問5 テストでどうしても分からず余白ができてしまった時はどうしますか?



***


僕、亀有一人はなんとかなんとかテストを解いていた。

最悪な事に下ネタしか浮かばない。

全て雅ヶ坂のせいだ。あいつめ。

雅ヶ坂...無事にテストできてるといいんだけどなぁ。


パイパイが頭から離れないよ。


「....ぅ....ぁ...あ」


前から潰れたゴブリンみたいな声がして、答案用紙から顔を上げるとそれは堅道から漏れ出た声のようだ。

頭を抱え、死にそうな声を上げている。

具合でも悪いのか?大丈夫だろうかよあいつ。


「堅道、静かに」


「....ぅ......うぅ」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます