特に酷いのは変態の天才だよね

僕の隣の席の美少女は、初城焔さん。

赤髪のロングヘアーに、黒縁眼鏡。タイツ。巨乳の美少女だ。

そんな彼女の隣の席になれた僕はラッキーボーイのはずなのに。


「何下卑た目で私を見ているんですか。気色が悪いですね。そこの窓から飛び降りて死んでくれませんか」


クズを見る目で僕に暴言を吐く彼女を、僕は────無視することにした。

ふいっと別の方向を向いてやり過ごす。

僕はドMをプレイとして見たりするのは好きだし、ムチを持って「ご主人様と言いなさい!」と言うのは好きだ。

それはそう言う趣向でやっていると理解しているからだ。

だが、実際相手を傷つける為に発するようなただの暴言は好きじゃない。

理由は一つ。

僕は傷つきやすいからだ。

傷つきやすい体と心。ガラスのマイハート超繊細!

繊細な人って優しいってよく言うよね。

僕は優しくて繊細で傷つきやすいんだ。うさぎなんだ!

泣くぞ.....これ以上言うと。死ねとか...死ねとか言うなよ!バーカ!バーカ!


「あれ?聞こえないフリをして逃げるんですか?全て図星だからですよね?」


無視だ無視。


「さ、さっきまで私の事を気持ち悪い視線で見ていたくせに今度は私を無視ですか?本当に頭にちゃんと脳みそがあるのか疑わしいですね」


無視だ!無視!反応したら負けだ。


「ちょっと、何か言ったらどうです?酷い事を言われても図星だから言い返せないのはわかりますが、あなたのような虫けらの分際で私を無視すると言うのは....ば、万死に値する行為ですよ」


何も言うことはない。

相手にしない。

僕は今無の境地にいる。

悟りを開きそうだ。何も聞こえない。何も感じない。


「ちょっと!無視とか...無視とか!どうかと思いますけど?ねぇ!ちょっと!こっち向きなさいよ!」


ガシッと背中の制服を鷲掴みにされてガッタンバッタン椅子ごと揺らされる。

たまったもんじゃない!!


「な、何すんだよ!そっちが酷い事言ってきたんだろ!」


振り向くと涙をためた目を赤くしている彼女の顔が目に飛び込んできた。

まだ僕の制服を掴んでいるままだが。


「いや....あの、ごめんて。そんな、泣く程じゃ...ないだろ?」


僕が泣きたかったっての!

何でそんな目がうるうるしてるんだよ?

美少女のくせに目をウルウルさせたらたとえ宇宙がひっくり返ったって僕が謝るしかないじゃないか!


「は、はぁ?目に穴でもあいてるんじゃないです?全然な、泣いてないですけど?」


ぐすん、ぐすんといいながらそっぽを向いて目をこする彼女を見て、僕はニヤリと笑いゆっくり首を傾げた。


もしかして彼女、無視されるのが弱点なんじゃないか?

今度酷い事言われたら使おう。




クラスメイトはほとんどクラスに入って着席しているようだ。

ざっと20人ちょいくらいだろうか。

ガラリと扉が開いて、黒髪に眼鏡の真面目そうな40代くらいのおっさんが入ってきた。

彼が先生だろうか。


「Cクラスの担任になった犬飼芝男(いぬかいしばお)だ」


無表情に、担任は短い自己紹介をし、その後持っていた黒いバインダーに目を落とした。


「えー、この天才育成学校には、神に選ばれた天才が集められている。まあひとまず君達入学おめでとう」


全く感情のこもってない声で無機質に言われてもこっちはどう言う反応をしていいか困るんですが...他のクラスメイトもそんな感じだった。


「だが君達が大変なのはこれからだから。この学園で退学になると言うことはつまり、生きる資格がないって事に直結するからね。くれぐれも退学にならないように、楽しい学園生活を送りましょう」


おー!....ってなるかよ。

もはや全然歓迎されてない感じするよ。

全部棒読みだもの。


「さてと、じゃあここまでは前置きみたいなものだから。プリントを配ります」


黒いバインダーから、プリントを取り出し配った。

僕にもプリントが回ってきたので目を通す。


________________________________


Cクラスの天才達


人に好かれる天才

演技の天才

殺しの天才

平凡の天才

暇つぶしの天才

素晴らしい少女漫画を描く天才

素晴らしい物語を描く天才

異性を恋に落とす天才

予知の天才

努力の天才

お嬢様の天才

勉学の天才

変態の天才

霊と心を通わせる天才

自己犠牲の天才

全ての物事を敏感に感じ取る事ができる天才

自己愛の天才

剣豪の天才

ゲームの天才

博愛の天才

束縛の天才

妄想の天才

自虐の天才

人を笑顔にする天才

絵を描く天才

人に嫌われる天才


定期的に天才同士で勝負をしてもらいます。

勝った方は本当の天才として学園に残り負けた方は必要ないので退学してもらいます。


_________________________________________



一通り目を通して僕は叫びたかった。

これツッコミどころありすぎるんだけど!!!!!

何!?なんでも天才ってつければいいと思ってんの?馬鹿なの!?


特に酷いのは変態の天才だよね。

何そんな奴クラスにいていいの?あと一つ殺しの天才とかいるんだけど!?アサシンがクラスメイトにいるとか退学以前の問題じゃないか!?

僕の努力の天才が...なんかこう、すごいあれじゃん。

すごい地味に見えてこないこれ?

というか勝負ってなんだ。色々ぐるぐる考えて僕は混乱状態だった。


「はい。ではこんなに沢山の凄い天才がこのクラスには集まっているという事だ。本当に僕はこのクラスになれて誇らしいさ」


棒読み無表情で言われても説得力ゼロです先生。


「先生、質問があるのですが」


一番前の席の黒髪男子がピンッと腕を耳につけた素晴らしい挙手をした。

あれはすごい。先生に褒められる挙手だ。後ろから見てもわかる。


「質問はないか?ないよな?じゃあまずはクラスの親睦を深めるために自己紹介から始めよう」


この先生酷い!!

スルー力高すぎるだろ。


「先生、質問です!」


尚も耳ピン挙手青年は続ける。

先生は、ずっと無表情だったがその時ぴくりと眉を動かした。


「......はぁ。堅道祐悟(かたみちゆうご)だな。俺から君の質問に答えられる事はないよ」


ため息をついてロボットみたいな話し方だったのが少し和らぐ。


「俺だって言わなくてはいけない事項。この黒いバインダーに書いてある事を説明するように、としか言われてないんだ。だからごめんな。こういう話してる事もあんまり良くないんだろうな」


教師なのに、教師なのか?

彼は少し悲しい表情を見せた。

先生の話を聞いて、僕はなんだか胸が痛くなった。

そんなの、ロボットと一緒じゃないか。

いや、ロボットでいいじゃないか。

話さなくてはいけないことを上から話せと言われ説明する。

理不尽な事を言わされ、そりゃ当然生徒達も何か言うだろうさ。質問だってあるよ。

僕だって聞いたいことあるもの。

変態の天才ってなんだよって。いや違う勝負ってなんだよって!殺しの天才ってどういうことだよって。いや違う。勝負に負けたら退学ってどういうことだよって。

でも、質問は一切受け付けない。

おかしい。こんなの理不尽だ。

きっと先生はそれを分かっている。

だが何か下手な事を言うことができないんだ。

あの風船みたいに弾けた校長先生を見たからというのもあるだろう。


「さぁ、気を取り直して自己紹介をしましょう」


また機械的な無表情に戻り先生は話を続けた。

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