学校なんて好きな奴いる?

卯月.....四月十日。


教室で馴れ合う生徒達の中、僕は一人窓辺でエッチなライトノベルを読んでいた。

勿論紺色の知的なブックカバーは忘れない。


僕、亀有一人(かめありかずと)は、生き残っていた。


人類の選別に、生き残ったのだ。


人類の選別の日、僕の家に一通の手紙が届いた。


【亀有一人。君は努力の天才だ────生きる】


赤い封筒の手紙には、そんな事が書いてあった。


「僕は努力の天才だったのか」


そんな事をぽつりと呟いて誰もいない亀有家に戻った僕は、裏に招待状と書いてあるのを見てギョッとした。


【貴方には、明日から天才育成強化学校へと入学していただきます】


「なんだって、学校?」


嫌だ。却下だ。学校なんて誰が行くか!

折角生き残ったんだから家で相変わらず引きこもってゲーム三昧しようと思ってたのに!


努力の天才って書いてあった時、絶対人違いだと思った。


だって僕!!!!

高校一年生の時から高校行かないで引きこもってたクズだもん!!!!

何で!?何が!?

努力の?天才???馬鹿なの?


神様人違いで僕みたいなどうしようもない奴生かしちゃってるよ!


僕なんて死んだら死んだでしょうがないかな、なんて思ってたのに。

それにしても困ったなぁ、僕は学校に行きたくないんだ。だから高校一年生の時から今の今まで三年間引きこもってたのに!


学校行くくらいなら死んだほうがマシだ。

いやそんなことは勿論冗談だけど命には変えられないし。

でも、僕はそれくらい学校が嫌いだった。


学校なんて好きな奴いる?

先生という独裁者に従い、皆で団結するという気色悪い仲間意識、他人同士で気を使って、ちょっと変な奴がいればその輪の中から排除。うんざりだ。


切るのを忘れて伸びきった黒髪だが、前髪は更に鬱陶しいのでカチューシャで上げている。

黒いジャージのチャックは全開けで、「絶対自宅警備員!」と筆文字で書いてあるイカすTシャツが僕のファッションセンスの無さを主張していた。


こんな奴が教室にいてみろよ。2秒でいじめの対象だぞ。ふざけんな。


「お届けものです」


黒い服を着た宗教団体みたいな男達が二人、トラックから降りてきた。


「亀有様、神様の選別での選定おめでとうございます。私共は、神の使いです」


顔は黒い布のようなもので隠してあって見えないが、神の使いだなんて胡散臭い集団がこのタイミングで来るってことは.,.....。


「有様の天才育成強化学校の入学の件に関してのお話をしに参りました」


やややややっぱりだ!!!

クソ、逃げ遅れた。勘弁してくれ。


その後、僕は長くなりそうな予感がしたので彼らを家に招き入れた。

家にはお出しするようなお茶などがなかった為母なる大地の牛乳をコップに注ぎ神の使い様方にお出しした。


そして僕の予想が的中し、黒光りする箱やら茶色い封筒やらを見せられながら一時間ほど説明を受けることになる。

いつ頃抜け出そうかとそわそわしている頃に、



「この学校からは退学システムというものがありまして」


なんて言われたもんだから僕の雨が降り出しそうどんより曇った顔はハッピー晴れのち天気予報!


「それは誠にござるか!!」


思わず飛び上がり小躍りしそうだった。

退学システムあるのかよ〜全く全く適当に一日二日やり過ごして退学してやるぜ!


「えぇ、残念ながら退学してしまった生徒さんには才能がなかったという事で処分という形になりますが」


「ん?」


今なんていった。


「処分って......何ですか」



「だから、処分です神様に生かされ、この学校に入学するということは、自身の才能を磨き、研磨し、発揮しなくてはいけません。それができなかったということですから、生かす価値なしとみなされ、処分されます」


表情は黒い布で見えないが当然というように淡々と言いやがった。


「退学したら、死ぬんですか?」


「そうですよ。中でも自主退学は神様に選別で生かしてもらいながら自分から退学するなどという愚行ですので、死んだ後は必ず地獄行きです。転生もできず一生苦しむ事になるでしょう」


思考が一瞬固まった。

死んだら二次元に行けるんだ!なんて言っていた厨二病時代の僕はとっくに過ぎていた。

退学したら死。

しかも自主退学はDed And Go to Dead.....おかしい!そんなの絶対おかしいよ!


「ちなみに明日学校に来られない場合も自主退学と同じ措置を取らせていただきます」


退学という逃げ道はなくなった。

明日学校に行かないという逃げ道もなくなった。

僕はどうすればいいんだ!!


「さて、ここまでの説明はご理解いただけましたでしょうか」


理解できるわけないだろ!お前がこんな明日から学校へ行け、そこで天才の才能を磨け、できなければ退学だ死ね!

って言われてみろ。できるか?


「あ.....はい。よくわかりました」


僕は俯いて彼らと目を合わせずコミュ障丸出しで答えた。


否──答えは学校に行くしかないのだ。

悟りを開いた坊さんの如く安らかな顔をして僕は悟った。


僕は頭の中ではでかい口を叩く小心者だった。

だって怖いもん逆らったら何されるかわかんないもん怖いもん。


「左様ですか。詳しいことや手続きの紙などは、こちらの封筒に記載されていますのでこちらを」


「こちらは明日着ていただく制服です」


茶色い封筒と、黒光りの箱を差し出された。


「あ...ありがとうございます」


制服かぁ...もう随分前から着てないな。

なんて、しみじみと過去を懐かしんで俯いていた僕だったが────箱を受け取った途端パシュッという音がして目の前の神の使い様達は風船の空気が抜けたようにしぼんでいった。


「わ、わわわ!!なんだよこれ!どうしたんですか!?」


「私達の使命は...亀有様に明日の学校説明をする事......ですから、あなたがせつめ....をりかいした...てんで...わたし...は...ふ..ひつ..よ」


プシュウと萎んでしまった彼らを見下ろした僕は鳥肌が止まらなかった。


無駄は徹底排除。

才能のない奴は死ね。

神様に従わない奴は死ね。

不要でこの世に不必要な人間は死ね。


「僕は死なない。絶対に神の思い通りにはならねえからな....僕を生かした事をあの世で後悔しやがれ」


そう言って僕は立てた親指をグッと下に下げた────妄想をして、どかりとテーブルに座り頭をかきながら茶色い封筒に目を通すのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます