White 怜之

 唐突に目が覚めた。

 由美はソファに横たわったまま辺りを見回した。暗い店内にはクリスマスソングが流れている。

 やだ。今何時かしら。もう消さなきゃ。

 起き上がろうとして、人の気配に身構える。そして一拍遅れて記憶が甦ってきた。


 バカみたいな要求。

 驚いて、それから呆れた顔。

 素っ気ない言葉と、優しい鼓動。


 温かい、腕のなか。


 由美は身を起こした。店の中は真っ暗だが、通りのイルミネーションが明るいのでぼんやりと人影が見える。怜之は階段の下に立って宿り木を見上げていた。もしも酔った勢いではなく声を掛けたら、彼はどうするだろうか。


 由美はソファから立ち上がって一歩足を踏み出した。こちらの気配を察したのか、怜之が振り返る。ラジオから流れてくるクリスマスソングが陽気でお気楽な曲調のものに変わった。何てタイミングだろう。今の今まで素敵なラブソングがかかっていたのに。ムードもへったくれもない。由美は笑った。怜之の面にも、ゆっくりと笑みが広がる。


 きっと、最高のクリスマスだ。

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