Red3´ クリスマス

 う、わあああぁぁぁっっっ。


 どうしよう! 酔っぱらってやってしまった!!



 怜之さとしさんにぎゅっとしがみついたまま、私は頬がかあっと熱くなるのを感じた。

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。

 出してしまった言葉は引っ込まない。それに、ここで素に戻ったら居たたまれない。

「ちゅー……」

 勢いで言ってみた。頬を押し付けた怜之さんの胸が、トクンとひとつ鼓動を刻む。

「しつこい」

 彼の返事は素っ気ないけれど、声には笑いが混じっている。だから私は少し安心して、そして欲張りになった。

 キスをして、と宿り木の下で強請ったとき、怜之さんは初めてまっすぐ私を見た。驚いた顔で、怪訝そうに眉を顰めて。それは私の望んだ表情ではなかったけれど、視線は私だけに向けられていた。

「けちー」

 嘘。キスなんて、してくれなくていい。こんな状況でキスなんてしない、その誠実さが好き。

「ケチで結構」

 突き放すようなことを言っていても、ちゃんと私を支えてくれてる優しさが好き。


 どうか。

 どうかその優しさのひと欠片かけらだけでも、私にください。


 私は益々強く怜之さんにしがみついた。観念したような苦笑とともに背に腕が回される。温かくて、思いの外力強い。ほう、と。安堵の溜息が漏れる。

「いい加減離れてください」

 怜之さんが言った。

「やー」

 私はくすくす笑いながら怜之さんにしがみつく。酔って火照った頬に、優しい鼓動が伝わってくる。私の鼓動も届いているんだろうか。


 結局私は怜之さんの腕のなかで意識を手放した。

 とても素敵なイヴだと思った。

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