条件

 鳥が一羽、空を飛んでいる。


「なぁ、空を飛ぶ為に必要な条件て、何だと思う?」


「そりゃ、鳥みたいな翼だろ。翼の無いモノは、空は飛べないだろ」


「なら、俺に翼があれば、俺もあの鳥のように空が飛べるのかな?」


「さぁな。翼があったことも、空を飛んだことも無いから分かんねぇよ」


 鳥は自由に空を舞っている。それは、彼らからすれば、何のしがらみのない理想の生き物だった。


「もしさ、あの鳥から翼を無くせば、あの鳥は飛べなくなるのかな?」


「いきなり何言ってんだよ」


「だってさ、空を飛ぶ為に必要な条件が翼なら、その翼さえ無くしてしまえば、空を飛ぶ事は叶わなくなると思わないかい?」


「まあ、そうだろうね。いや、だからなんだって言うんだよ」


「ねぇ、あの翼引きちぎってみようよ」


「いやいや、なんでそんな事するんだよ」


 彼らの声が聞こえたのか、鳥は山の方へ、遠くの方へ飛んで行ってしまった。


「だって、それで分かるんだよ?翼があれば飛べるのかどうか」


 彼は至って真面目な顔でそう答えた。


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