旅館

 着物を来た女将が、丁寧に頭を下げる。


「また、お越しやす」


 僕は彼女のスーツケースを持ったまま、つられて深々と頭を下げていた。


 高級旅館という訳ではないけれど、風情と温かみのある、そんな旅館だった。




 数年後、僕は再びあの旅館に訪れた。あの時と変わらない外観が、とても懐かしく思えて仕方なかった。


「おや、今日は一人でお越しはったんですね」


 女将は僕を見て、不思議な顔でそう言った。

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