拒絶と本心

作者 宮樹せん

2

1人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★ Very Good!!

「言葉による感情のぶつかり合い」というのは、とても難しいものです。

昔からよく言われている事ですが、男性は思いを口にするのを避け、行動で示す傾向がある。女性はその逆。

全部が全部それに当てはまる訳じゃありませんが、実際そういう分類になるパターンは多いと思います。
少なくとも僕の周りはその傾向が強い。

この物語においても、感情の八割くらいは「言葉」にして吐き出されており、全体における台詞の割合がかなり高い。そして一つのカギカッコにおける台詞の量もやや多い。

これが「女々しい」という印象を与える要因になっているのかもしれません。
ものの考え方や癇癪持ちな行動は「男性的」「女性的」のどちらとも感じなかったけれど、
拒絶する際に言葉にしてそれを伝えるアプローチがなんとなく「女性的」な印象を与えているのかな、と考えました。

しかし、どんなに言葉を重ねようが、行動で示そうが、人間は平気で嘘をつく。
それがいっときの気の迷いであるかもしれないし、衝動的に突いて出た不確かな感情かもしれない。

その複雑な構造や不整合なやり取りこそが人間たらしめるもので、実はコミュニケーションの大半に意味なんて無いんじゃないか、という極端な発想にすら陥りかける。

彼は「捨てられた」と受け止めるが、相手はそれを言葉にして伝えたわけじゃない。
その行動は一時的な逃避にすぎず、明日になればまた同じことをくり返すかもしれない。

もしかしたら彼が失ったのは携帯だけで、もっと言うと彼が持っている財産とはその身体に宿す心臓だけかもしれない。

言葉が真実を語らないのなら、行動が波紋を打たないのなら、僕らはみな心臓の鼓動を聞かせ合っているだけなのではないだろうか。

「愛している」と言おうが、頬を叩こうが、それらは全て心臓の鼓動を聞かせること、つまり「私はちゃんと生きている」という証明を見せているだけなので… 続きを読む