第150話 絶対不敗の決闘者 -17

   ◆



(――同じじゃないんだよな)


 相手の言葉を受け、拓斗は心の中だけでそう呟いた。

 拓斗が透明な盾を展開しているから、エーデルにはまるで攻撃を跳ね返しているように思えたのだろう。

 しかしそうなれば彼はかなりの思い違いをしている。

 エーデルと同じであればダメージは反射する。

 しかし当然、壁を作っているだけなのでダメージは反射しない。

 つまり――


(相手はこっちが予想している以上にキツイんだ)


 拓斗は確信した。

 エーデルが受けている負傷は見た目通り深い。それこそ、自分が放った攻撃が壁に当たっただけなのに、そのまま返ってきているのだと勘違いする程に。

 そこに隙は必ずある。

 拓斗は相手の攻撃に合わせ、目前で盾を作る。


 右。

 左。

 左。

 上。

 下。


 そこにエーデルの拳、蹴りが合わさる。

 しかし全て弾く。

 それは全て拓斗が読み切っているということでもあった。

 間違いなくセバスチャンとの訓練の成果だった。


(見える……っ)


 相手の足の動き。

 それだけで次の動きが分かる。

 相手の動きが鈍って単調になっていることもあるが、予想以上に相手の動きについていけている。


「やべえなおい! 俺以上かよ! 攻撃すら当てられねえのに反射するとか!」


 エーデルが妙に嬉しそうに口にする。


(まさか手を抜いて……いや、それはない)


 頭の中で否定する。

 エーデルは余裕がないからそう口にしまっているだけだ。

 だからこそ今自分は立っていられる。


 驕るな。

 油断するな。

 集中しろ。


 ガゴッ!!!


「っ!」


 エーデルの左拳――重い一撃が来た。

 到底拳が奏でる音ではない。

 重い一撃とはいえ、透明な盾を手に持っている訳ではないので衝撃で後ろに飛ばされることはない。

 だが彼の左足は一歩下がっていた。


「――!」


 エーデルが、ここが好機とばかりに右拳を高く掲げた。そのまま振り下ろせばかなりの威力の攻撃が繰り出されるであろう。


「食らいやが――」



(――今だ!)



 エーデルの拳が振り下ろされる前に、拓斗はその場にしゃがみ込んだ。

 そしてその後ろから――



!!」



 大剣を上段に構えた遥が姿を現わした。

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