第112話 修行・修練・習得 -12
「……はあ?」
拓斗は心底(何言っているんだこいつ?)と呆れていた。
路地裏で真面目な顔をして話したかと思えば、何者か、だとは。
呆れの果てに、拓斗は笑いを返していた。
「はは。僕が何者かって、そんな大層な存在じゃないぞ。『スピリ』に関わるようになったのも巻き込まれたことがきっかけだしね。……あ」
そう口にしながら、何者か、と言われる要因に思い当たった。
「その時に『盾の種』ってのを埋め込まれたけど、それは戦闘時に透明な盾を出せるだけのものだからね。そのことを今更言っているの?」
「……分かりません。が、私が問うているのは守りの方ではありません」
真剣な表情を崩さず、セバスチャンは首を横に振る。
「今だから言いますが、先の特訓、正直出来る訳がないと思っていました」
「おい。それは聞き捨てならないぞ」
出来る訳がないという前提で特訓をしていたということは、最初から拓斗のお願いを聞くつもりがなかったということである。
「勘違いしないでくださいね。もう全部話しますが、最初の特訓で絶対に出来ないと思わせて、徐々にステップアップさせる予定だったのですよ」
「つまり最初のは完全に失敗させることが目的だったんだな」
「まあ平たく言えばそうですが……ですが貴方はやり遂げた上に次の領域まで自分で辿り着いた。それがどれだけ異様なことか分かりますか? 普通の人間では有り得ないのですよ」
「さっきも言ったが、どこが異様なんだよ? それにお前だって出来ているんだから、僕が普通の人じゃないなら、お前だってそうじゃないか」
色々格闘術とか足を舐める趣味とかを考えたら普通ではないが、そういう話ではない。彼は『スピリ』のパートナーであり、あくまでフランシスカに『頭脳』を対価で貸し出している存在なのだ。
だから拓斗と同じ。
――そう思っていたのだが。
「……私は普通の人間ではありませんよ」
「え?」
「もうここまで来たら全部お話ししましょう。そんなに秘密にしておくことではないですが、吹聴して廻るのだけは勘弁お願いいたします」
「それは構わないが……」
「……そうですね。貴方はそういう性格では無いですね。本当に短い付き合いですが、何となく伝わってきましたよ」
そう微笑を零し、セバスチャンはひと呼吸置いた後に告げた。
「私は――『スピリ』の成り損ないなのですよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます