第57話 戸惑い -08

   ◆



「……っ、何考えているのよ、私は……」


 自室に戻った遥は、ベッドで毛布にくるまって悶えていた。

 あまりにも自分の行動が恥ずかしかったからだ。

 寝巻の状態で拓斗の部屋に行った。

 目的は話す為だった。

 何を?

 先のやり取りでの言い訳を。

 自覚したのは、口にした後だった。

 そこで気が付いたのだ。

 自分が無意識下でやった行動。


 拓斗に言い訳をすること。

 つまり、拓斗にだけは誤解されたくない――、ということだった。


「~~~~っ!!」


 わざわざ部屋に出向いてまで何をしているのか。

 何でこんなことをしてしまったのか。

 遥は理解していなかった。

 いや、理解していないふりをしていただけだ。


「……そんなこと……絶対ないんだから……」


 枕に顔を埋めながら、遥は足をパタパタとさせる。

 認めたくなかった。

 認めたら負けだと思った。

 だから口にすることは愚か、想像することさえしないように意識した。


 結果。

 遥ももやもやとした気持ちで一晩を過ごすこととなった。

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