外道高校生探偵モリス

作者 如月新一

87

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★★★ Excellent!!!

 一見人が好さそうに見えるが実は腹黒い、が、真実はどっちかわからない、知れば知るほど謎が深まるユニークな人間性を持つ天才高校生探偵、モリス。短編の話数を追うごとに興味深くなる彼のキャラクターを発明しただけで、作品の勝利は確定したようなものだ。
 全五話というひかえめな話数ながら、幅広いジャンルのミステリに挑戦しており、非常に高い意欲と技術を感じる。取材の質も良く、精神疾患やSNSの闇、違法薬物に関するうんちくなど、専門家かと思うほど微に入り細を穿っている。読み応え十分。正直、カクヨムでこれほどの作品にめぐり合えるとは思わなかった。
 本格ミステリの様相を呈していながら主人公、語り部(平)含め、キャラは独自のバックストーリーと価値観を有しており、骨太な人間ドラマ、社会派ドラマとしても楽しめる。少々ぶっきらぼうな表現で現代社会を風刺しつつ、それでも現代に対して、人に対して、希望を捨てきれない作者のいじらしいほど情熱的な想いが感じられる。また、それらがすべて、透明感のある素直な文体によってつづられ、形成される唯一無二の世界観がクセになる。
 個人的に蕎麦屋にヤギマスクと拳銃から始まる二話目が冒頭からつかみも小気味よく気に入った。ぜひシリーズ化してほしい怪作。

★★★ Excellent!!!

勧められて読んだのですが、想像以上でした。
ミステリーとしての完成度の高さに驚きました。他の方の言う通り、商業レベルだと思います。また、キャラクター文芸としての楽しさもあり、やりとりも面白かったです。
それにしても各話で森巣の台詞が突き刺さり、考えさせられます。この余韻もこのシリーズの醍醐味かもしれません。お勧めです。

★★★ Excellent!!!

連作推理物は刊行されている作品も多く、一般文芸でも人気のジャンルかと思いますが、その中の一つとして見ても、申し分のない出来栄えの作品です。お金を出してこの書籍を買ったとしても、後悔はしないかと思います。

全5話で、どこからでも読めるつくりになっていますが、完成度、伏線の見事さ、解決シーンのインパクト、何より「外道探偵」森巣の存在感から、ぼくとしてはやはり第一話を推したいと思います。

ミステリ好きなら読んで損はない作品です。ぜひに。

★★★ Excellent!!!

ヒーローらしさを持つ探偵ならば、どこで起きた事件にせよ(図々しく)介入し、推理を披露して解決するだろう。
では高校生探偵のモリスはというと、あくまで手近なところでの事件には関わるが、必ずしもそこに強烈な積極性(たとえば、謎への執着心)が見られるわけではないし、何より彼はヒーローのようなハッタリの大きさは持たない。名探偵と呼ぶに値する類い稀な洞察力を持ちながら、自分の手の届く範囲を悟っている人間の持つ渇いた雰囲気がある。それは高校生がまとうにはあまりにも早すぎるもので、読者である我々は「モリスの同級生」という視点から、彼が何歩か先にいる人間であると思わされる。
物語には現実で話題になったニューストピックに基づいたものが多いが、取り上げられているのはその最新性ではなく、「遠いようで近い場所でも起きていること」「私たちの真隣にあること」「私たちも話題にすること」という属性だろうか。探偵の介入力という点ではあまりフィクション的ではないモリスと、これらの事件との距離感の描き方、その現実感のさじ加減に強い一貫性がある。
ヒーローとしての探偵ならば他に適任者がいるかもしれない。名探偵へ依頼をするつもりであっても、彼ではない他の候補を探した方がいいかもしれない。
だがもし、どこか冷めていて、頭が切れて、そのくせ根っこのどこかに信頼できる何かを持つ、そんな"悪友"が欲しいのならば、モリスに会ってみてはどうだろう。きっと今からでも遅くはない。

★★★ Excellent!!!

まずキャッチコピーにも書きましたがキャラクターが魅力的です。なんといっても探偵役の森巣がいい!二面性のある腹黒キャラかと思えば一本芯が通ってるような、でも本当にそうなの?みたいな感じで主人公の平と一緒に翻弄されつつ魅了されてしまいます。また、その平も平凡な主人公のようだけど森巣に振り回されるばかりではなく、悩みながらも自分のあり方を探そうとする等身大の高校生で親近感を感じる魅力的なキャラクターだと思います。
ストーリーは日常系ミステリーと本格犯罪ミステリーの良いとこどりというか、一体どういうことだ?!と思わず言ってしまうような謎が日常の延長線で起こり、それを解明していきます。ある時は主人公たち自身が危険に晒されたり事件解決のために奔走したりしますが、完全に安楽椅子探偵の話もあったりしてそれぞれ面白いです。内容はネタバレになるから避けますが、羊強盗の話は真相がわかった時すごい!と本当に感心しました。言うなれば「今」の時代のミステリー小説だなと思います。
もっとこのキャラクター達が活躍するミステリーが読みたいです。ぜひとも続編を!

★★★ Excellent!!!

短編というと、短い分書きやすいイメージがありますが、実際は短い分非常に高度な技術が要求され、一文字たりとも無駄にできないシビアな部分もあります。

本作品は、連作短編という形を取ったミステリーであり、当然、一話ごとに短編のシビアな技術を要求されるわけですが、その技術を見事にクリアしている傑作作品でもあります。

ストーリーは、事件が起きて探偵役の高校生が推理する流れですが、ただの推理ではないところに、面白さがあります。

事件の謎解きは当然ですが、その先に読者の想像に委ねるかのように、社会風刺を鋭く切り込まれているような仕掛けが施されています。その為、読者は解答を元に提示されたもう一つの仕掛けを、想像しながら楽しめるという二重の面白さを味わうことができます。

文章、キャラクター、設定の巧妙さは、本作品が埋もれることなく支持を受けてランキング上位に上がってきたことで証明されています。

作り込まれたミステリーを読みたい方はもちろん、小説の書き方を知りたい方にもオススメできる良作です。

読み終えた後、必ず続きが読みたいと思うこと間違いなしです!!