迎撃する者たち②

「――ということで、二人はさとり鵺を仕留めに行っていますわ」


 場所は市外の北東である。

 そこで、今しがたの状況を、晶の母は斎たちに告げた。


「なるほど。それは、盲点でしたねぇ」


 苦笑しながら、斎は横側にいる玉響と目配りをする。

 その視線に、玉響は無表情ながら、しかし少しだが目をぎらつかせていた。


「貴方がたとすれば、上手くうちの子たちを利用したつもりだったでしょうが、詰めで立場が逆になりましたね」


 二人に対して、晶の父・聡が苦笑をしながら言う。

「残念ですが、貴方たちの役割はここでの足止め役です。攻防戦の主役はあの子たちだ。君らは、それを陰で支える脇役に甘んじてもらいますよ」

「苛立ちや不満は、せいぜい目の前の囮にだけぶつけてくださいね?」

「んっんー。非常に腹立たしい限りですね」


 若干挑発しているのではないかという聡と奥方の言葉に、斎はシルクハットを目深に被り直す。

 平静を装っているが、その頬はどのような感情からか引き攣っていた。


「まさか我らが陽動の足止め役にさせられるとは。腹立たしい……」

「むかつく……」


 無表情で言って、玉響は前へと進み出ていく。

 そちらは怨霊たちが控える方向で、彼女が前進したのを見て、怨霊たちも我先にという風に迫ってくる。

 それが、直後一瞬で粉砕される。

 振り下ろした大斧が、怨霊たちを巻き込んで爆発を遂げたのである。地面にまでぶつかった凄まじい破壊力に、斎や聡たちだけでなく、敵である怨霊らもぎょっとする。


「ストレス、発散!」

 玉響は、そう言うと敵へと躍り出ていく。

 それは、非常に感情任せであり、激情を解放した行動であった。

 好き勝手ながら、激烈な動きを見せ始める彼女に、斎は舌を打って、彼女を援護するために敵へと進んでいく。


「上手くいきましたね」


 斎たちが敵へと向かったのを見て、晶の母が聡を見る。


「あとは、あの子たちを信じましょう」

「あぁ。そうだね」


 言葉を交わし、二人は頷き合う。

 そして、彼らもまた敵に向かって進みだすのだった。

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