第5話 最悪の接触

「流石にここまで来れば少しは大丈夫だろ」


 俺は先程のドローンもどきに襲われた場所より

少し離れた防犯カメラの死角になっている路地裏にいる。一応、防犯カメラにも俺が映らないように細工はしてあるが、念のために【霧隠(キリガクレ)】の術式も発動したままだ。

 

 「つーか異世界ってこんな面倒なのかよ・・」


 小説ではお手軽に強くなれ、金、名誉、女も楽して手に入るみたいな描写があるが、実際は来て早々アラートが鳴り響き、ドローンもどきには撃たれるわ、控えめに言ってもロクでもないことしか起こっていない。


 「その前に何故俺の術式がドローンに効かなかったか、だな」


 この問題は早く解決しないとマズい。このままじゃまたドローンもどきが来て、それを破壊してのいたちごっこにしかならない。


 (どういうことをして俺の正体を見破ったのか?) 


 音の反響とかか? でもその程度なら無意識の防御で打ち消しているはずなのでその線は薄い。

 それか他の魔術的要因か? 先からカメラやドローンもどきなど科学的なモノしか見ていないが、魔術と機械の両方を兼ね備えたドローンもどきだったかもしれない。


 「いくら考えても今は平行線だな・・」


 この世界の情報を俺は持っていない。 

 

 魔術の有無、歴史、地形、経済、政治、文化など知っておくことが有り過ぎる、いや知らなければこの世界では生き残れない。

 序盤でゲームオーバーは洒落にならないのでどうにかしたいが

 

 「ま こういうのは今は考えても仕方ないか」


 まずは目先の問題を解決しないと


 「とりあえず今夜の寝床と飯、だな」


今日くらいは我慢できるが、明日、明後日のことを考えるとマズい


 「取りあえず動かないと始まらないか」

 寝床と飯の確保の為、路地裏から出ようとした時ーー



 「見つけました」


 「うん?」

 

 何だ?と思い、後ろを振り向くとこっちを睨んでいる奴がいた。


 (・・・女の人・・・だな)


 俺より若干年上だろうか、髪は腰まで届きそうなくらいのブロンドで、薄紫色のゴーグルらしき物を掛けているがかなりの美人さんだ

 俺は今、【霧隠(キリガクレ)】の術式を使っているのであちらからは見えないので他の奴を見ているのかと思ったが、

  

 「貴方です。貴方。貴方しかいるはずがないでしょう」


 「俺?」


 「そうです」


 今、俺を見つけることができる人間は2種類いる。

 1つは俺より強い魔術師。

 俺より強ければこの隠形の術式を見破っても不思議ではない。

だが、この世界に魔術が存在しているのか今は分からないので断言は出来ない。


 2つ目はできればあまり関わりたくないが、先のドローンもどきに俺を追わせた組織の人間。


 方法は分からないが、何故かドローンもどきは俺の姿が見えた。

 

 どんな機能が備わっているかは謎だが、それならば俺の姿が見えていることに説明が付く。

 

 あの女の人の正体がどちらにせよ俺の術式を見破る術(すべ)を持っている事になる。

 

 魔術師にとって自分の術式の弱点や対処法を知られるのは命に関わるので即急に対応しなければならない。


 口を封じたり、記憶を消したり、最悪の場合は・・・殺したり、な。


 だから俺は少しでも情報を得るためその女の人と話す事にした。


 「あのー ちょっといいですか?」


 「何ですか?」


 彼女は何故か不機嫌そうだ。初対面のはずですが俺は何かしましたかね?

 

 「何故、俺を追うんですか?」


 「それは貴方が一番分かっているはずですが?」


 分かってはいるが、さっきのアレは正当防衛にあたり犯罪には当たらないし、俺は悪く無いはずだ。

 なのでーー

 

 「すみません。ちょっとホントに分からないんですよ。できれば教えていただきませんか?」


 あえて、知らないフリを通すことにする。

 

 

 「貴方は不法入国と器物損壊の罪を侵しています。まさか身に覚えが無いとは言いませんよね?」


 えっ アレって犯罪にあたるの?

 確かにこの世界には侵入した。確かにドローンもどきは破壊した。

 けど、異世界転移はどうしようもないし、器物損壊はいきなり撃ってきたから正当防衛だろと主張したいんですけど・・・


 「更に貴方には他国のスパイ容疑があります。大人しく同行して下さい」


 スパイの件は俺知りませんが・・・

と言おうとしたが牽制のように右手にある剣を構えた。


 「変わった剣だな?」


 剣の形をしているがその割には刃がない。


 「剣?何を言っているんですか?【機巧武装(クラフト)】に決まっているでしょう。まあ形は剣ですが」


 何を言っているんだ的な目で見られる。


 「クラフト?」

 魔女工房術(クラフトワークス)のことかと思っが、

 

 「流石に知らないとは言わせませんよ」 

 「いや、知らないんだけど・・・」

  この世界来たばかりなんでね。魔女工房術(クラフトワークス)とも違うらしい。おそらく。

 「マジでクラフト?って何?」


 俺は真面目に聞いたが、


 「流石にその事をとぼけられるとカチンときますね」


 といきなりキレかかってる。何で!?沸点低くない!?


 (ヤバい。言葉を選ばないと即斬られるかも・・)

 

 「まあいいです。強制的に連行すればいいだけの話ですから」

 とクラフト?と言っている武器を構えた。


 「ちょ、ちょっと待って!」

 「問答無用! 起動【アイオライト】!」

 「バトル展開早くね!?」

 泣き言言っても仕方ないので俺も戦闘態勢に入る。

 

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機巧師(マキナ)と魔術師(マギア)の異世界席巻録 絵虫恵理 @keiry

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