【季節ネタ】トリック・オア・トリート! 3人目




「…………」


「えーと、何。毛布オバケ的な? いやシーツオバケ? 顔どこ。こっち見えてる?」


「…………」


「今突き出されてるの手だよね。ってことはこっちはちゃんと向いてるわけか。でもさすがに決まり文句も言わないんじゃこっちとしても反応に困るんだけど」


「……トリック、オア、トリート……?」


「……イタズラとかできるの?って感じだけどまあいいか。はい」


「……」


「…………」


「………………」


「…………まずそれ脱ごうか」


「…………(ごそごそ)」


「……下も仮装してるのになんでシーツ被ってたの」


「……だって、恥ずかしいと、思って」


「えーと、恥ずかしいならやらなきゃいいと思うんだけど。っていうか玄関先まで車で来るのに恥ずかしいんだ」


「でも、お菓子、欲しい……」


「いや別に仮装しなくても作ったんだからあげるけど」


「恥ずかしくは、ない、けど。恥ずかしい…んじゃ、ないかと思って」


「……? ……もしかして、あんたが恥ずかしいんじゃなくて、こっちが恥ずかしいんじゃってこと?」


「……(こくん)」


「……気遣うならもっと根本的に気遣ってくれれば嬉しいっていうか、あんたが自重したところで他の奴らが自重しないならあんまり変わんない気がするしそもそも自重になってないんじゃと思うけど、まあその気持ちは嬉しいよ、うん」


「包帯、ぐるぐる巻き、だと。不審者……だし」


「シーツ被ってるのも十分不審者だけどな」


「……だめ?」


「……いや別にダメとまでは言わないけど」


「よかった……」


「……あー、うん。とりあえずほらお菓子」


「……かぼちゃ」


「のプリンだから。パンプキンプリン。ほら頭のとこ開けて」


「これ、なんだっけ…?」


「ん? 入れ物の方なら、ジャック・オー・ランタン風だけど」


「ジャック……」


「ジャック・オー・ランタンね。ジャックランタンとも言うけど」


「……ジャック、オー、ランタン…」


「その指差しと区切り方、もしかして名前?」


「……うん。かわいい…」


「いやいやいや、それ入れ物だから。外側再利用しただけだから」


「プリン、食べてから、防腐処理、する……」


「するな。残すようなもんじゃないから。ホントやめろ」


「…………」


「そんな目してもダメなものはダメ。後々に残るものとして作ってないんだよ。そのがったがたで歪んだ顔のジャック・オー・ランタンが残るのはごめんこうむる」


「…………」


「……それ以上ごねると返してもらうからな?」


「……、……わかった」


「それならよし。生ものだから早めに食べるように。日持ちしないんだよそれ」


「うん。味わって、食べる」


「いや味わうほどのものでもないから。材料からして安いし味も安っぽいからな?」


「味わって、食べる」


「……まあ、あんたがそうしたいならそれでいいけど」


「そろそろ、帰る」


「うん、気をつけて。って言っても気をつけるほど一人で歩かないか」


「あと、これ」


「……? えーと、これは?」


「パンプキンタルト……モンブラン風?」


「なんで疑問形なの。っていうかなんでくれるの?」


「いつも、もらってるから……」


「いや、ハロウィンはそういう趣旨のイベントだからね? 一方的にもらっていいんだからね?」


「……いらなかった?」


「そうは言ってないって。……ありがとう、食後のデザートにでもするよ」


「うん、食べて。……じゃあ、また」


「うん、また。……。――あー、今年もイタズラできなかった。レンリに食べ物絡みのイタズラできないからなー。他の奴らが知ったらまた贔屓だとか騒ぐかな。……まあいいか。贔屓してんのは事実なわけだし割と今更だし」

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