彼女と彼女と、
「さて。念のために聞くけど体力に自信は?」
「へ、平均かな……」
「じゃ、足の速さは?」
「速くはないです……」
「敬語戻ってる戻ってる。なんでそんな固くなってるの」
「冷静に考えたら、足手まといになっちゃうかなって……」
「そんなことないよ。っていうか私だって体力平均あればいいなーってくらいだし、足速いわけでもないし。それ込みで計画立ててるから大丈夫だよ」
「そ、そう……?」
「うん、そう。だから安心して――は無理だと思うけど、そんなに思いつめなくてもいいから。最悪の場合は起こらないように手は打ってるし。うまく行けばもうけものってくらいの心持ちで」
「でも、うまく行った方が嬉しいでしょう?」
「そりゃね。こんな機会、今後あるとも思えないし。あなたにはちょっと無茶させちゃうことになるけど」
「それは、わたしが自分で選んだことだから……」
「そう言ってもらえるとちょっと気が楽になるな。――それじゃあ、始めようか」
* * *
「……うまく行くように段取り組んだんだからおかしくはないんだけど、ここまで順調にいくと逆に怖いな」
「わ、悪いことじゃないんだよね……?」
「まあ、ね。考えすぎなだけだと思うけど、一応念には念を入れておこうかな。って言っても、今以上にできることなんてあんまりないんだけど」
「ここまで来たら、あとは基本大人しくしてるだけ……って言ってた、よね?」
「うん。見つからないように大人しくしておくのが第一。状況次第で『逃げる』が選択肢に出てくるくらいで」
「じゃあ、状況が変わらない限りは待機、でいいんだよね」
「そう。状況が激変しない限りはじっとしてるだけで終わる、はず。ぶっちゃけ暇だね」
「そ、そう、だね……?」
「気を張りすぎても疲れちゃうから世間話でもしようか」
「世間話……」
「世間話じゃなくても、気になってることがあるなら訊いてくれていいよ。私の方は結構あなたについて聞いてるけど、あなたはそうじゃないからね。不公平だし」
「不公平とか、そういう問題なの……?」
「私にとっては。って言っても、いきなりそんなこと言われても訊きにくいと思うし……そうだな、まずはちょっとした昔話を聞いてもらえるかな」
「昔話?」
「そう、昔話。面白いものじゃないけどね。あなたには聞いてもらっておいた方がいいだろうから。――馬鹿な子どもと、馬鹿な大人の話だよ」
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