天然ほど厄介なものはない
「あ、お帰り嬢さん。収穫はあった?」
「まあそれなりに。付き合わせてすみません、三笠さん」
「いーっていーって。あいつらのあんな顔見れただけでお釣りがくるし。あれは傑作だったなー」
「……悪趣味ですね」
「あっはは、よく言われる。で、もう戻るわけ?」
「ええ、とりあえずは。……これ以上時間をかけると色々と心配ですし」
「それは確かに。じゃあご案内いたしますよ、お嬢さま」
「お願いします――けどそのうすら寒い口調はやめてください」
「……嬢さん、だんだん遠慮なくなってきたよな?」
「遠慮する必要性を感じなくなってきたので」
「ま、いーけど。そんじゃ――」
「あ、いたー!」
「…………」
「………………」
「戻るまでもなく向こうから来たな?」
「……そうですね」
「なかなか戻ってこないから、迎えに来たよ。危険な目には合わなかった? 主にこいつのせいで」
「なかなかも何も30分と経ってない上に待っとけって言ったの忘れたのかこの馬鹿。あとその発言は色々と三笠さんに失礼だ」
「でも授業が終わるまでは待ちましたよ。それから探したんですから大目に見てください」
「『戻るまで』待てって注釈付けたの忘れたわけ? 待てもできないのか犬以下かおまえら。――っていうか浅見さん、一体どんな授業をしたらこんなに早く終わるんです。そもそもなに一緒にうろうろしてるんですか」
「最初に言ったとおり、作品解説込みの作品鑑賞しただけだよー? ちゃんと興味持ってくれるような題材選んだし」
「興味持ってくれるような題材……?」
「うん。いつも持ち歩いててよかった~」
「なんかすごくヤな予感がするんですが、もしやアレを人目に触れさせたんじゃないでしょうね」
「アレ? どれのこと?」
「――っ出すな開くな空気読めこの天然ー!!」
「怒った顔もいいね女神っ。スケッチしていい?」
「いいわけないでしょう本当空気読んでください、っていうかまさかソレ中身全部見せたんじゃ」
「全部じゃないよ~。奏ちゃんにも怒られちゃうし」
「まあそれなら良……くない全然良くない結局見せてるんじゃないですか何してくれやがってるんです浅見さん」
「嬢さん嬢さん、口調乱れてる」
「今そんなことにかかずらってられないんですほっといてください」
「……これはまた、すっごく動揺してますね」
「オレたちとしては良いもの見れたけどねっ」
「見せてもらったのは1冊分だけだったけど、あれって多分奏さんのコレクションからスケッチ起こしたんだろうね。すごい再現率だったし」
「…………」
「わかりますよレンリ。貰えるものなら貰いたいですよねぇ。羨ましい」
「――詳しいことはわからないけど、おまえらがなんかギリギリの発言してんだろうなーってのはわかった」
「待ってください三笠さん、その言い方もしや誤解してませんか。確かにある意味ギリギリの発言ですが。……っていうか何血迷ってるんだおまえら」
「だってキミ写真嫌いで昔のってほとんど残ってないから。この際絵でもいいかなって」
「まず何で欲しがるのかがわかんないがいろんな意味で却下だ却下」
「その人はOKなのに不公平だと思います! 異議ありっ」
「こっちだって事後承諾だったんだっての。これ以上拡散されるのは御免被る。っつーかこれ以上意味のない会話で時間を浪費するつもりはないから」
「意味がない会話だなんてひどいじゃないですか」
「ひどくないし意味ないものは意味ない。せっかくこっちがそれなりに手助けしてさっさとお役御免しようとしてんのに邪魔してんのはおまえらだろうがこの鳥頭ども。そもそもの発端意図的に忘れてんのかこの脳みそスッカラカン。次脱線したら問答無用で帰るぞ知り合いも現れたことだしな?」
「ごめん」
「すみません」
「ごめんなさいー!」
「……ごめんなさい」
「わあスゲエ見事な手綱さばき。慣れてんなー嬢さん」
「不本意ながら。付き合いは長いですからね。……というわけでもしものときは頼みます、浅見さん」
「いいよ~。ただしそのままウチにお持ち帰りさせてくれるならねっ!」
「誤解どころじゃない爆弾発言は止めてください。これだから天然は」
「でもいいよね? ギブ&テイクが女神のポリシーだもんね?」
「ポリシーなんて大それたものじゃありませんが。まあいいですよ。今日中に家に帰してさえくれれば」
「大丈夫だよ~。女神のご飯食べて女神と一緒に過ごして女神観察したいだけだから!」
「観察とか本人目の前にして言わないでください。いいかげん言葉のチョイスの仕方を学ぶべきだと思います」
「一番しゃべるのがみっちゃんな時点で無理だよ~」
「……納得してしまう自分が嫌ですが、それなら仕方ありません。でもこれ以上ヤツに染まらないでくださいね」
「善処しまーす」
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