無理やり転校編
とりあえずお試し期間
「お、怒ってる、よね?」
「一体何が不満なのかな? ウチの学校、お金積んで土下座してでも入れて欲しいっていう人もいるのに」
「まあ仕方ないですよ。少々強引に事を運んだのは私たちですし」
「…………」
「……オーケイわかった理解した。あんたらが馬鹿で阿呆でどうしようもなく自分勝手だっていうのはよく知ってたつもりだったが、どうやら幼馴染フィルター的なものがかかってたらしいな。これからは頭に『心底』ってつけることにするよこの真性馬鹿ども。っつーかユズ、いちいち聞くな見て分かれ神経逆撫ですんじゃねーよ。カンナ、そういう問題じゃないって何度言わせる気だその耳は飾りかそれとも脳味噌入ってねぇのかその頭。ミスミ、わかってんならすんなよってか少々どこじゃねーだろうが過小評価にもほどがあるっつーの。レンリ、言いたいことがあるなら口で言え目で訴えるな今回ばかりは甘やかさないからな?」
「……これは怒ってますねぇ」
「だから言ったじゃん! せめて初登校は明日にした方がいいってー!」
「ユズ、多分問題はそこじゃないと思うよ?」
「…………」
「なに、レンリ」
「………………」
「言いたいことがあるなら口で言えって言ったのが理解できなかった? その耳と口は飾りなのかそれともコミュニケーションをとろうっつー気さえないのかどっちだ?」
「うわ怖っ! 笑ってるけど目ェ笑ってないよねあれ!」
「レンリにはいつも甘いですから、ああいうのを見るとなんというか、むしろこちらが居た堪れないですね」
「っていうか口調が荒れすぎて怖いんだけど。いつもはあそこまでないよね?」
「そこの三馬鹿聞こえてんだけど。それとも聞かせてんの?」
「すみませんごめんなさい許してくださいー!」
「聞こえることを前提に言ったのは否定しませんよ」
「距離的に聞こえないように喋るのは無理そうだしね」
「…………その、」
「ん?」
「…………ごめんなさい」
「おおっ、レンリが喋った!」
「なに、そのクララが立った的な言い方。レンリだって全く喋らないわけじゃないって知ってるよね、ユズ」
「まあまあカンナ。確かに言葉を口に出すのは稀といえば稀ですし」
「……それは何に対しての謝罪なのかなレンリ。その返答によっては窓叩き割ってでもこの車から降りるよ?」
「容赦ないね」
「さらに上を求めるとか鬼畜だよねー」
「自分の発言には責任持てよユズ? あとで覚えてろ」
「!?」
「馬鹿ですねぇ、ユズ」
「……意見聞かずに、勝手なことして、ごめん。……でも、来て欲しかった、から」
「だったら何をしても良いって?」
「そうじゃ、ないけど」
「散々あんたらに言ってるけど、権力とか財力とか、何かを成し遂げるのに必要なものを持ってるからって、それをしていいってわけじゃないっつーのはわかってる? 特にあんたらは人権無視しすぎ。こういうことされてどう思うかってくらい考えろ。想像するくらいの頭はあるだろうと思ってたんだけど?」
「それは、……怒るかな、とか、嫌だろうな、とか。わかってる、けど……」
「けど何?」
「…………」
「そこまでにしてあげてください。レンリ一人を苛めたって仕方ないでしょう」
「あんたが言うかその台詞」
「言いますよ、見ていてレンリが可哀相なので。……私の意見を言わせてもらえば、あなたがどう思うのか想像した上で、それでも自分の欲望を優先した結果が今の状況ですから。今あなたに糾弾されたところで意見を翻したり、全部なかったことにしてこのままUターンなんてする気は全くないですが」
「そうそう。君だってわかってるんじゃないの?」
「理性と感情は別っつー言葉知ってるかこの野郎」
「と、とりあえずさ、ちょっとでいいから通ってみてよ! 案外良いかなって思えるかもだし!」
「そこに至るまでの過程のせいで悪印象しか抱けないんだけど」
「そうこう言ってるうちに着いたよ? まあお試し期間みたいなものだと思って」
「カンナの家が経営してますから、至れり尽くせりですしね」
「……同じクラス、だし……不便はない、と思う……」
「とりあえず、俺たちの学園にようこそっ!」
「……はー。わかったお試し期間なお試し期間。面倒だと思ったらソッコー帰るから。そこんとこ肝に銘じとけよこの馬鹿ども」
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