第11話 今夜はドイツ牛

 黒い物体が何なのか分からなかったヒロトは、ヘリが飛び立った後に気が付いた。

 「エド。こいつ等をどうする気だ?」

 「私の屋敷に居た奴らだ。『迎えに来たよ』って言ったら、5匹共が付いて来たんだ。そいつらのエサも持って来た。番犬いるだろう。艶とかないから餌だけしか貰えてなかったのかもな」


 パイロットが声を掛けてきた。

 「エドワード様」

 「なんだ?」

 「ワープ掛けます。その子達を大人しくさせて下さいね」

 「ほいほい。ん、ワープって何だ?」

 「リーダーから点検後にワープは付けろと言われて、付けてもらいました。レクチャーも受けて実地もしたので大丈夫ですよ」

 「おお!グレートアップしたんだな!!」

 「5分後にワープを掛けます。皆さんも、シートベルト付けて下さいね」


 ーそれでは、カウントダウン入りますー

 ・・・5、4、3、2、1、0!

 ヒュンッ!!


 ワープを掛けた1時間後。

 ヘリは、ドイツからオーストラリアへ戻ってきた。


 ヨウイチとユタカは、2人共にイライラ度が最高潮に達していた。

 無事にヘリが戻って来るのを見ると、すぐにポートへと向かって走っていた。

 タラップが降りてくる。

 真っ先に飛び出してきたのは、カズキだった。

 何かを抱えてる。

 マサ、タカ、ユウマ達も、何かを抱えて降りてくる。

 ボスも出てきた。やはり何かを抱えてる。

 ヒロトも何かを抱えて、なにやら上機嫌な様子だ。

 エドは、パイロットと共に出てきた。

 しかも番犬を5匹連れて。


 ユタカは聞いていた。

 「どこまで行ってたんだ?もしかして…」

 エドが応じた。

 「そうそう。その、もしかしてだよ」

 やっぱり…。

 ユタカは溜息を吐いた。


 カズキの「少しだけドイツの空気を嗅いで来たよ」と呟きが聞こえてきた。


 ボスが声を掛けてきた。

 「ユタカ悪かったな」

 「いや、無事なら良かったよ」

 「ヨウイチも」

 ヨウイチは、それよりも番犬の方が気になっていた。

 「それはいいけど、あの5匹は」


 パースに着くと、番犬は5匹ともダウンしていたが、主人のエドワード手ずから毛づくろいに艶出しをしてもらっていた。水も貰うと、元気を取り戻したみたいだ。


 ボスは、ヨウイチとユタカに言った。

 「今夜は、ドイツ牛で夕食だ。エドが、たらふく人間用の食料を入れてくれたからな。それに、まだ食料や水が残ってるんだ。運ぶのを手伝ってくれないか」


 食料と水は、GPとクリニックに半分ずつ分けられた。

 エドは、ドーベルマンにエサを与えてる。


 ヒロトは喫茶に肉を持って行き見せると、シェフ達の目が変わった。

 「ワォ!ドイツ牛だ」

 ヒロトがシェフ達に言う。

 「今夜の夕食は、これを使って作って欲しい」

 すかさずトモ・ボスが声を掛けてくる。

 「BBQでもいいぞ!裏庭にドーベルマンが5匹いる。中庭で焼いてもいいし、それは任す。ボルシチでもいいし、メニューは任せた。20人分位で、よろしく」


 そう言ったトモは、自分が抱えて来た物をシェフに見せる。

 「それと、これは冷凍しとく?」

 シェフは驚いた。

 「どこで、こんな物を…」

 「下処理して冷凍?それとも塩漬け?あ、ちなみに賄い用にするから、よろしく」


 その言葉を聞き、シェフ達は活気づいた。

 これを賄い?

 いいねぇ…。

 それなら、半分は冷凍にして、残り半分を塩漬けにするか。


 トモ・ボスは言っていた。

 「今夜の夕食を、先にしてね~」

 「OK!!」

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