第3話 居場所

 一方、地上では。


 「ユタカ!ユタカッ、大変だっ」

 「ああ、煩い。分かってるよ…。物静かで何事にも動じない奴が、そんなに喚くと、凄く大変だと思ってしまうだろう。あの爺ジュニアめ…、あいつが再婚すれば、丸く収まるのに、しないからだ。

 ったく、たらしジュニアめ…、私のボスを、よくも拉致ってくれたな。

 腹立つ奴め、己らのくだらないゲームに、よくもボスを巻き込んでくれたな。

 エドだって、それが嫌で逃げてるのに。分からん頑固爺だな…」


 苦笑しながらマサは声を掛けてくる。

 「ユタカ…」

 「言っとくが、私は、あのイギリスで生まれたドイツジュニアに、物凄く腹が立ってるんだよ」

 「だろうな」


 カチャとドアが開き、カズキが入ってきた。

 「ねえねえ、タカとユウマ知らない?」

 「寝てるんじゃないか?」

 「なに、その言葉。マサらしくないな。せっかく、あの2人と遊べると思ったのにな…」


 ユタカが口を挟んでくる。

 「別にいいだろ。あいつ等は来たばかりで、1ヶ月も滞在するんだ」

 カズキは驚いた。

 「なにイラついてるんだよ。…ねえ、マサ。ユタカ、どうしたの?」


 マサは自分の目で見たことを、カズキに言った。

 カズキは驚いて目を瞠った。

 「なっ!!」


 すると、大きな音が響いてきた。

 ドンッ!!


 ビクッ…としたマサとカズキは、音のした方を振り向いた。

 ユタカが手刀で壁を叩いた音だった。

 叩かれた壁は、ひび割れている。


 マサとカズキは、ユタカをそのままにしてコンピュータ室を後にした。

 こういう時は、右腕か左腕に相談するのが一番だ。

 幸い、右腕はパースに来ている。

 2人は建築中のラーメン屋に向かった。

 その途中、カズキはタカとユウマにメールをした。


 ヨウイチは自分の夢が二つとも叶うのを目の前にして、幸福感と満足感に浸っている。その時、マサとカズキが店に入ってきた。

 マサが、ボスの事を言ってきた。

 「なっ…。あの、やたらと発砲しまくる爺に…」


 ツゥルッ、ツゥルルルン…、ツゥルルルン…。

 「ああ、悪い。メールだ」

 そう言いながら、カズキは自分のiPhoneを開いた。

 メールに目をやる。

 「えっ!…嘘だろ」


 どした?と、ヨウイチとマサが聞いてくる。

 カズキは、その2人にメール画面を見せながら言った。

 「タカとユウマは、そのジェットに乗ってるって。それに、ボスは麻酔を打たれて寝てるってさ」

 ヨウイチとマサの2人は目を瞠った。

 「なっ…」

 ヨウイチが先に口を開いた。

 「でかした。それなら一先ずは安心だ。後は救援を送るだけだ。ヘリの手配だ」


 カズキは、ある事に思いついた。

 「その前に、あの人に、どう説明すればいいんだろう」

 マサが言ってきた。

 「私が説明する。で、誰に言うんだ?」

 「ドクター・ヒロト。彼は色んな病院にヘルプとして行ってる」


 ヨウイチは、カズキに指示する。

 「カズキ、お前は連絡係だ。今は、どの辺りを飛んでるのか。それを知りたい」

 「OK!」


 しかし、空の上でも圏外にはならないのね。

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