第8話 理加編(8)

「早く入って、僕もう待ちくたびれたよ。」

ルイに飛び付きながらも、しっかりと笑顔は私に向けてくれている。

弟は弟でも私の弟の匠とは、まったく雰囲気のちがう彼が天使に見えたのだ。

「この子が、さっき話をしていた中学生の弟、真樹斗、14歳だから二年生よ。」

正直、まだ小学生に見えるほどのあどけなさと、反抗期のオーラーが微塵もない

真樹斗くんだった。

「初めまして。るいるいの弟、真樹斗です。マキちゃんて呼んでね。よろしくお願いします。」

やっぱりかわいい。

ルイも超がつくほど美人だし、その弟、真樹斗くんもイケメンだし、きっと、右扉の部屋に住んでるお兄さんも、かなりのイケメンだと勝手に想像を膨らませてしまった。

「こちらこそ初めまして。理加です。今日はお邪魔させていただきます。」

「もうやだ理加、中学生に敬語なんか使わないでよ。」

ルイが笑いながら、さりげなく足元にルームシューズを出してくれた。

「これ理加の専用のルームシューズね。足のサイズ間違ってないかしら。」

白で統一された玄関に私の大好きなガーベラの花かごが飾ってあった。

「ぴったりです。よく私の足のサイズ分かりましたね。」

「そう、だいたい見ただけで分かるものよ。」


「ねえ、もう僕、おなかペコペコだから、二人ともごはんにしようよ。」

「やっぱりね。真樹斗が料理を習いたいなんておかしいと思ったのよ。

もうしょうがない子ね。ごはん目当てでしょ?」

ルイは優しいお姉さんなんだなと、感心しつつ、ふと生意気な弟、匠の顔が思い浮かんだ。

「ごはん目当て?ちがっ・・・。

はいはい、ごはん目当てて事にしといてあげるよ。」

ルイが一瞬、二人いるのかと思うような口ぶりで真樹斗くんは、答えるとリビングの扉を開けてくれた。




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