第六話「英雄と呼ばれた男」
1.いつかの独白
――この日記帳も残りページが少なくなってきたな。分かってたことだが、異世界での出来事を全部書いていたら、とてもじゃないがページが足りない。
本当に色んなことがあったよ。異民族たちの村に出向いて一緒に畑を耕したり。「聖なる民」と呼ばれる人たちの集落から盗まれた神像を取り返す為に、象に似た動物に乗って密林の盗賊団を追ったり。商船に乗って大海原を旅したこともあったな。
沢山の人々と出会い、別れ、多くの経験をした。楽しいこともあったし、辛いこともあった。悲しいさよならをしたこともある。
出来ればその全部を書き残しておきたいところなんだが……ページ数も時間も足りないから、割愛することにした。
――そもそも、どれもつい最近の出来事のはずなのに、微妙に遠い昔のことのように記憶に靄がかかってしまっていて、詳細を書けないんだがな。歳くったせいか、どうにも最近の記憶があやふやなんだ。
実はこの日記も、そのあやふやな記憶をきちんと紙に書いて整理したいって気持ちから書き始めた。
なので、あと一つだけエピソードを語って、この日記帳の締めにしたいと思う。俺があの街を――異世界を本当の意味で去ることになった、あの出来事を。
そう、あれは俺が元の世界から再び異世界へ転移してしまった、あの朝から始まった――。
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