「僕」の独り言3

 「冒険者ギルド」での初仕事がただの清掃作業で、しかも巨大鼠に追い回されたり道具を紛失したことで報酬を棒引きされたり……また「冒険」とは程遠い内容だ。

 この日記帳を最初にざっと読んだ時には、もっと「冒険」と呼べるような内容だと感じたものだけど……斜め読みして一部の単語だけ拾うのと、一からきちんと読むのとではここまで印象が変わるものなのか。


 それとも、冒険らしい冒険は後半部分に集中していたのかな?


 それに、何だか色々な部分に違和感を覚えた。

 確かこの街の住民は、その殆どが東洋人風の顔つきだと書かれていたはずだ。けれども、エリーズは見事な金髪の持ち主だというし、サビーヌに至ってはハッキリと「黒人」と形容されている。

 オリビエも「もじゃもじゃの茶髪」の持ち主のようだし、あまり東洋系という印象は受けない。


 登場人物の名前も、今まではフェイとかリンとか、どこか東洋系を思わせるものだったけど、「エリザベート」や「サビーヌ」、「オリビエ」なんて西洋系の名前そのものだ。

 この日記帳の中身が叔父さんの「妄想小説」だったとしても、流石に設定が雑じゃなかろうか?


 叔父さんの相棒であるはずのシリィも、今回は何故だか影が薄い。

 そこに何かの示唆を感じてしまうのは、流石に考え過ぎだろうか……?


 そして何より、今回登場した地下道――この場所を、

 記憶の片隅に、何か引っかかるものがある。はっきりとではないけれども……。


『Hi, Geegle.』


 スマホに呼びかけて、検索アシスタントの「Geegle」アプリを立ち上げる。続けて僕が呟く検索ワードは――。

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