第62話
「今日は日曜日。製造業の会社はお休みだ。だから鍵を壊して、中に入った。そして六つあった一番大きな花火を円形に並べて、雅美と二人でその内側にお札を貼った」
「どうして?」
「おいおい、現場にいたのに、わからないのかい。もちろんあいつを閉じ込めておくためさ。密閉された空間ではないけど、ごく短い時間だけならあいつの動きを止められると雅美が言うので、やってみた。もう少しお札があったら完璧だったんだけど、どうやらうまくいったようだね」
「で、もうすぐ開かれる花火大会で使うはずの花火を全部爆発させたというわけか。あいつをやっつけるために」
「そうだよ」
「花火屋さん、倒産するなあ」
「それは大丈夫だよ。ちゃんと保険に入っているから損害は補償されるし、儲かっている会社だから、一年くらい収入が減っても路頭に迷うことなんてないし。それくらいは調べておいたよ」
「それならいいけど……って、これって犯罪じゃないのか」
「まごうことなき、完全に犯罪だよ」
「だから言ったでしょう。私が死ぬのと三人そろって犯罪者になるのと、どっちがいいって」
そう言った雅美は笑っていた。
「なるほど、そういうことか。でもし捕まったら、かなりやばいことになるなあ」
「それは大丈夫なんじゃないかな。あそこに防犯カメラはないし、もしものことを考えて周りに民家などないから目撃者もいないし、足跡などの物的証拠も花火が全て吹き飛ばしてくれたし」
「そうよ。これで捕まったら、よっぽど運が悪いわよ」
「そうそう。犯罪者とは、警察に捕まった人のことを言うんだからね」
「と言うことは、俺に何も言わずに、一緒に犯罪者にしたのかよ」
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