第57話

地図は近辺あたりはこれでもかと言わんばかりに詳しく書かれていたが、肝心の目的の建物とおもわれるところには、ココ、としか書かれていなかった。


――ほんとに。まったく。くそっ!


上条はエンジンをかけた。



目的地に着く前に暗くなり始め、着いた頃には夜の真っ只中だった。


――ここかあ。


主要幹線道路から細い脇道に入ってしばらく進んだ先に、それはあった。


見た目はさして大きくない倉庫か工場。


どちらにしてもどこかの中小企業の所有するものと判る佇まいの建物だった。


トラックでも入れそうな大きな扉があり、その横に人が使用するためのものと思われる戸があった。


その戸は少し開いており、中の灯りが外に漏れていた。


上条はその中に入った。


一言で言うと、中は球体だらけだった。


上条はその球体をどこかで見たことがあるような気がしたが、考えても思い出せなかった。


薄茶色の大小さまざまな球体が両サイドの棚に積み上げられ、中央の幅広の通路のような空間には、その直径が1メートル強のものが六つ、円形に並べられていた。


その円の内側に、桜井と雅美がいた。


「おかえりなさい」


「ご苦労さん」


上条は歩み寄り、円の中に入った。


六つの球体の内側には、購入したお札が貼られていた。

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