第279話支え

というわけで、俺がメインでやることになってしまった。


「エミリーは瀬川さんのサポートだけしててください」


「うん。カズチャン頑張って」


後ろを振り向いたら、エミリーがピョンピョン飛び跳ねていた。


「私は夫を支える系の女だから。好きに動いてくれていいよ」


「それはありがたい」


適当に言っておく。


勝ち負けなんてどうでもいいが、全力でやってみるか。


「じゃあ、やるか」


ピピー


ホイッスルが鳴り、試合が再開する。


敵チームのメンバーがサーブをした。


俺はなんとか落下地点でボールを返す。


しかし、態勢が崩れてしまったため次は厳しい。


「そおれ」


と思っていたのだが、代わりにエミリーが返してくれた。


そのすきに態勢を立て直す。


こんな調子でラリーが続き、点を取ることができた。


そのあとも、点を取ったり取られたりする。


「あれ? 意外にいい試合ができていない?」


今もラリーの果てに点を取れ、マッチポイントになった。


相手チームが手を抜いているだけなのかもしれないが、一方的に負けてるわけではない。


だからと言って、エミリーだけが活躍しているわけでもないし。


「ひょっとして、俺を支えてくれているからか?」


そう思って背後を振り向く。


「huhu、さっき言った通り、私は夫を立てる女だからね」


「そんなことを言ってたなあ」


流石はチームを率いているリーダーと言うべきか?


意外だが、エミリーはワンマンではない。


俺にうまく合わせてくれるのが妙に気持ちよかった。


「じゃあ、もう1点取って決めよう」


そのままhahahaと笑う。


試合が再開し、エミリーがあげたトスを俺が打ち込む。


ボールは相手チームのコートに着弾。


「愛の勝利だね」


「それは否定したい」

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