第263話二人で

「これを一緒に鳴らすのか」


俺は鐘を仰ぎ見る。


いつもハーレムなどと言ってる俺だが、誰か一人と結ばれることがあるのだろうか?


「そうだ」


俺はあることに気が付く。


「全員で鳴らすのはダメ?」


ここにおおむね全員そろっているわけだ。


ハーレムの完成を願い、鐘の音色を響かせるのも悪くないんじゃないのか?


「ダメに決まってるやろ。それだとよしかは当主に選ばれへん」


「じゃあ、事実婚ってことで」


これなら重婚にもならないし、何の問題もない。


「いい加減にしてくれや。はよ二人で鐘を鳴らしてくれ。絶対に二人でや」


やたらと念を押す。


今更ながら、そんなに友人が大事なのかね?


「そこまで言うならやりましょう」


決意を固めたところで、俺の前に濡れたような黒髪の少女が立つ。


「はい、わたくしの人生の伴侶として、ともに困難に立ち向かってください」


この前言われたことを、また繰り返される。


分家とはいえ、名家に生まれて魔法の才能を見出された以上、苦労は多いのだろうな。


「桜子ちゃん、アンタのことやないで」


「え? ひょっとしてボクのことを言ってる」


今度は嫁が。


「そんなわけないやろ。よしかのことやで」


「私は一樹君が、好きな相手としたらいいと思いますよ。なんなら、サラとだって」


「ウチはそんなことはしないで。よしかの幸せが第一や」


「そう言ってくれるのは嬉しいんですけどね」


先輩はサラさんが善意で、俺とくっつけようとしてるのは理解してるようだ。


だが、そのうえで気乗りしないらしい。


「試すだけの行為や。やるだけやってくれ」


先輩と鳴らせという意味なのか、くすんだ金髪少女がこちらに視線を送ってくる。


というか、相部屋を考えるときみたいになってきたなあ。

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