第255話海

バスが海岸近くのバス停に止まり、俺たち一行は下車した。


ほかのオタクっぽい男たちも、一緒に降りる。


そのまましばらく歩き、アニメの舞台の地へ。


「早く来過ぎたかもしれへんな。夕焼けは見れそうもないで」


残念そうな声を出しながら、くすんだ金髪が海を見ている。


「でも、潮風がいい感じだと思うよ。故郷を思い出すな」


もう一人の金髪も海を眺めていた。


イギリスは海に囲まれてるし、そんなものだろう。


「おや? 森の魔女だと聞いとったが、本当は海の魔女なんか?」


「違うよ。海の魔女はキミの友人がいるとこ」


オリヴィアが言ったのは、御三家最後の一角だろう。


何せ”海賊”だからな。


「アイツ等が航海に出ていたのは大昔やで。ヴァルキュリアちゃんは、海より天空の魔女の気もするしな」


「どっちでもいいし、今はその話をやめよう」


全然関係ない話題になったので、俺は仲裁に入った。


「今はこの海を楽しもう」


俺は水平線に向かって指をさす。


「わたくしはあまり海に来たことがないですね」


「私は海と聞いたら凍るものだと思っていたぞ」


「2人ともあまりなじみがないんだな」


俺は母と暮らしていた場所が海に近いので、意外に親近感がある。


「私はいろいろな国に行きましたし、海の近くに滞在したこともありますね」


そういったのはもちろんロリ先輩。


「やっぱ、仕事を潰されたことを根に持ってるんですか?」


「え? 私はこの旅を楽しんでますよ。一樹君は変な勘違いをしないでくださいね」


おそらく作り笑いの表情で、目の前の陰陽師は言ったのだった。

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