第206話邂逅

「いやー、やればできるものですね」


ロリ先輩がでかい胸を張り、誇らしげに語っている。


先輩の体形が物珍しくて近づいて来た人も多いし、お疲れのはずだ。


「本当に辛かった。もう変な男は、見たくもない」


うんざりするような言い方のサーシャ。


「ボクは見世物にされるのは慣れているから、全然気にしてないよ」


「わたくしは慣れてません。社交が得意な一族ではないですからね」


世界に知られる御三家とは違い、桜子はあくまで日本の有力な一族にすぎない。


あまりほかの一族に媚びなそうだしな。


「ウチは結構楽しかったで。また来年もやりたいくらいや」


言い出しっぺの金髪少女は、満足そうに言う。


女性陣が失ったものは多いが、それでも俺たちは勝利できたわけだしな。


「あ、もう終わりだと教えないと」


雑用係である俺は、完売を知らせる看板を設置する。


念のために作っておいて、本当によかった。


「すいません。もう完売です」


並んでいたオタクたちが不満そうな顔をしたが、無名サークルの本を買えないからではないのだろう。


女の子と触れ合いたかっただろうオタクたちは、じぶしぶと去っていく。


「今更ながら、個性の強いメンツがそろったものだ」


5人を見ながらしみじみ思う。


今日の勝利は、間違いなく彼女たちの魅力によるもの。


「証拠の写真をとっておこうよ。これでケチをつけられたら、ボクたち何のために頑張ったか分からないし」


「そうですね。アイツ等が文句を言えないように、ちゃんと残しておきましょう」


あくまでホーエンハイム一族の、親子喧嘩でしかないわけだし。


流石にこの問題は、御三家最後の一角も口出しないんじゃないのか?


と思ったが、2人から若干狂気を感じたので、スマホのカメラで俺たちの販売スペースを撮影しておいた。


俺たちの本を買ってくれたオタクの皆様にも協力をお願いし、本をもって写真を撮ってもらう。


証拠として認めてもらえるといいのだが。


「おっと、もうそろそろイベントの終了時刻」


主催者が借りているだけの会場にすぎないので、終了時刻までに撤収しないといけない。


早めに片づけを完了させないとな。


そう思って、とりかかろうとした時だ。


「あるかもとは思ったが、やはり来たんやな」


サラさんは嫌そうな声と顔で言う。


くすんだ金髪の男女2人が、彼女の視線の先にいた。

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