第203話行列

「そこそこ増えてきてる」


本当に話題になっているようで、ほぼ来なかったお客さんが、10分に1回くらいの割合に増えていた。


さらにリツイートされてあの写真が拡散されれば、さらに増えると予想できる。


「とはいえ、この段ボールが片付くのかな?」


同人誌の在庫を見ながら落胆する。


サラさんは気合を入れて臨んだため、それなりの数が残っていた。


「完売したらという条件なんだから、もっと少なくしておけばいいのに」


もし売り切れなければ、知人を頼ってアメリカに亡命しようか?


サラさんは守られても、俺の貞操はかなり危険になるがな。


「量が少ないと、おかんに文句を言われるで。しかたないんや」


少し前に来日した強烈な美少女を思い出していたら、サラさんから文句を言われる。


「もう時間との勝負じゃないのか? イベント終了までにどれだけ拡散するか」


歴史も実績もコネもない我がサークルは、売り子の美少女に頼るしかない。


あの写真がどれだけ見られるかに、全てがかかっている。


「もう少しや。それだけ経てば、大人気になるはずやで」


とサラさんが言っていたら、本当になった。


集まってるのを見て並んだ人もいるだろうが、美少女に触れ合えるというのが話題になったのだろう。


まるで、人気サークルのような行列ができ、サラさんも含めた五人の売り子が必死で対応している。


俺は与えられた雑用を必死にこなしながら、成り行きを見守っていた。


段ボールが一つ空になり、いそいでそれをたたむ。


「もしかしたら、いけるんじゃないのか?」

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