第179話終決

「今、助けます」


わたくしはお兄様に札をはり、呪文を唱えました。


「煩悩退散」


マナを受けて札が光り、魔法が発動します。


これで思春期特有の症状が消え去り、昔の優しいお兄様に。


「いきなり何をするんだよ?」


当然ですが、お兄様はいら立ちました。


「悪いものを封じたのです。どうです? 私を見て、欲情できますか?」


「当たり前のことを聞くな。妹同然だろうが……」


お兄様は黙ります。


「あれ? いつもはもっと気持ちが高ぶるのに。どうして何も感じないんだろう?」


「成功です」


優しいだけの昔のお兄様が、帰ってきてくれました。


「だから、わたくしは性欲におぼれたりはしません。清廉な巫女ですからね」


「うん? 何を言ってるかよくわからないが、今の俺には何もできないだろうな」


「数日前、オリヴィアお姉さまに対し、言ったことです。あれは【魔】に憑りつかれている姿でした」


「あれは、単に言えと言われただけだぞ。まあ、やりすぎたとも思っているがな」


「でしたら、あれはお兄様の本音ではなかったということでしょうか?」


ひょっとして、わたくしの勘違い?


「当たり前だ。さすがの俺でも、好き好んで叫んだりはしない。だが、改めて見返すと、お前の巫女服姿はなかなかいいな」


「もしかして、性欲が戻ってます?」


「ああ、いつも通りの俺だよ」


どういうことか考えた末、結論にたどり着きました。


わたくしが必死で開発した術は、短時間しか効果を発揮しなのでしょう。


不完全なだけの術です。


「勘違いだったから、問題ないんですけどね」


お兄様は、あの当時のままだった。


その事実に安堵します。


「よくわからないが、お前がそれでいいなら問題ないんじゃないか?」


「はい、これからもよろしくお願いしますね」


笑顔で言いました。


「ああ。ハーレムの妹要員として頼むぞ」


「あなたは……」


やはり、性欲は封じれたほうがよかったのかもしれません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る